ナンテン(9)
エキゾチックな南天の星空。遠く南国の空で初めて目にする星座や天体。南天の星々が星座として組み込まれるようになったのは、500年前の大航海時代にスペイン人やポルトガル人が目にして以降のことですが、南十字星については早くも1455年に最初の記述があります。大海原を行く船乗りたちにとって空に輝く小さな十字架は、とても印象的だったのでしょう。南十字星は方角を教えてくれる重要な星座でもありました。南十字星を観察することで、船乗りは無事目的地に着くことができたのです。初めて体系的に南天の星座を定めたのは16世紀オランダの天文学者・地理学者プランキウスでした。この時定められたのは、くじゃく、ふうちょう、カメレオン、きょしちょう、とびうお、など、南半球の珍しい動物の星座でした。18世紀に入ると、フランスの巨匠ラカイユによって、南天の星座がほぼ現在のものにまとめられました。この時ラカイユが加えたのは、はちぶんぎ、じょうぎ、ぼうえんきょう、けんびきょう、とけい、らしんばん、など、どちらかといえば素っ気ない星座です。南天の空には、大小マゼラン雲やエータカリーナ星雲、など、美しく興味深い天体も多数あります。これらの天体は天文学的にも非常に重要なものです。日本はいま、欧米と共同で南米チリにALMAを建設しようとしています。ALMAは80台にもおよぶ電波望遠鏡群を駆使し、星の誕生や銀河の誕生、生命の起源物質など、宇宙の謎に迫ろうという壮大なプロジェクトです。
アルマ望遠鏡(正式には、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計:Atacama Large Millimeter/submillimeter Array =『ALMA』)は、南米のチリ共和国北部にある、アタカマ砂漠の標高約5000メートルの高原に建設されます。アタカマ砂漠は年間降水量が100ミリ以下でほぼ年中晴天なこと、さらに標高が高いため水蒸気による電波吸収の影響を受けにくいことなどから、比較的短い波長(高い周波数)の電波でも観測可能で、アルマ望遠鏡の観測波長域となるサブミリ波もとらえることができます。また、土地も広く平坦なため、たくさんの望遠鏡の建設に適しています。
アルマ望遠鏡は、パラボラアンテナ66台を組み合わせる干渉計方式の巨大電波望遠鏡です。直径12メートルのアンテナを50台組み合わせるアンテナ群と、直径12メートルのアンテナ4台と直径7メートルアンテナ12台からなる「アタカマコンパクトアレイ(ACA)」で構成されています。アンテナは全て移動可能なタイプです。アンテナを動かして、それらの間隔を最大18.5キロメートルまで広げることで、直径18.5キロメートルの電波望遠鏡に相当する空間分解能(=視力)を得ることができ、ミリ波・サブミリ波領域では世界最高の感度と分解能を備えた望遠鏡となります。2002年から建設が始まり、2012年から本格運用を開始する予定です。略称の「アルマ(ALMA)」は、チリの公用語となっているスペイン語で「たましい」を意味します。
その「アルマ(たましい)」にふさわしい出来事が・・・
■チリ落盤事故33人全員を救出
チリ北部コピアポ近郊のサンホセ(San Jose)鉱山に作業員が閉じ込められた落盤事故で、12日夜に開始された救出作業は13日午後9時55分(日本時間14日午前9時55分)、33人全員を無事引き上げて完了、空前の救出作戦は事故発生から69日ぶりに大成功のうちに終わった。
本当に・・・おめでとう。