「マネキン」にこだわって調べている中、マネキン造形作家について知ることができました。純粋?芸術における「彫刻・彫塑」と経済社会における「マネキン」の関係について深く考えさせられました。これも「ルビンの壷」ではないかと・・・私自身の制作における意識もさらに変革していかなければと思います。
■マネキン造形作家「欠田誠」
1934年東京都生まれ。
1957年京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)彫刻科卒業。在学中に二科展に出品、特待賞受賞。
1957年七彩工芸(現・七彩)に入社、マネキン原型制作を始める。
1961年二科展で二科銀賞を受賞。
1964年~65年インターナシィナル・コッペリア社の招きによりスペインで原型制作に協力。
1971年七彩工芸スタッフと目を見開いたまま人体を型取りする技術(FCR)の開発に成功。
1971年七彩工芸グループは(FCR)技術でスーパーリアル・マネキンを制作、「視覚の錯覚」展を開催 (渋谷・西武百貨店)。
1974年第11回日本国際美術展 出品(東京都美術館・他)。
1975年ジャパン・ショップ‘75で技術開発賞、日本商工会議所会頭賞を受賞。
第一回東京展 出品(東京都美術館)。
1977年第20回毎日選抜美術展 出品(京都・大丸百貨店)。
1980年まがいものの光景・現代美術とユーモア展 出品(国立国際美術館)。
1983年現代のリアリズム展 出品(埼玉県立近代美術館)。
1986年七彩退職後、トーマネにてサンローランやシャネルのオリジナル・マネキンなどを制作。
ヤマトマネキンにて、ヤマトマネキン・原型スタッフと、上海ハワード・アーツ社の協力を得て、紙を素材にしたエコ・マネキンを開発。新システムによる多機能マネキン。新スポーツマネキン。などを制作。
2002年『マネキン美しい人体の物語』を晶文社より出版。
2004年江戸川大学 非常勤講師。
2005年江戸川大学 特別講師。
2006年より(株)アップルにて、マネキン開発スタッフ、の育成など協力。
■マネキン美しい人体の物語「欠田誠」
単行本: 206ページ/出版社: 晶文社 (2002/10)/定価1,995円(税込)
国籍不明、モデル不詳、親しみの持てるイイ感じだけど、はたしてこんな女性がいるものか。世につれ人につれ、好まれる顔や体型は変化する。時代が憧れる女性像を、鏡のように映し出すのがマネキンだ。大正期芸術運動を背景に京都で誕生した「島津マネキン」、目を見開いたままの全身を型取りする技術、シャネルやサンローランのマネキンの制作秘話、ウインドウ・ディスプレイの変遷。魅力的な人体はいかにして作られるか。マネキン制作45年、斯界トップを行く原型作家が美の秘密を明かす。マネキンの歩みとともに描く「裏ファッション史」。写真資料も必見の一冊。
■春田佳章
神戸在住の写真家で、1958年神戸新聞読者写真コンテスト年度賞1位、1960年朝日カメラ年度賞(モノクロの部)1位などを受賞、個展や数々の企画展、朝日カメラ誌上などで作品を発表してきた。一方、写真家を志す若い人達の育成に努めるなど、精力的に写真活動を続けて来た。更に次の個展に向かって生涯現役の意欲を燃やしておられる写真家。
■Doll's House魅惑の異空間「春田佳章」日本カメラ社
サイズ 四六判変型122頁/本体税込3,990円
人のように息づき、生きる気配に満ちたマネキン。暗闇からひっそりとこちらを伺うように佇立する人形たち。あたかも、心臓の鼓動を漏らさないよう立ち振る舞い、しかしまなざしはこちらへ注がれているかのようだ。
マネキンは服を着せるためのものであり、特別な場合以外、マネキンが裸の状態で展示される事はない。マネキンの美は服を着せる事によって完成する美だと言える。とはいえ、裸の形(素の造形)が魅力的に作られていなくては服を美しく表現する事は出来ない。原型制作は、たとえ服を着せれば隠れてしまう部分であっても精魂込めて創る。マネキンの造形は人体の美しさ、魅力を表現すると言う意味では人体彫刻と変わらない。ファションの世界と深いかかわりを持ちながらモードの世界で生きるマネキンの容姿は、時代の好みに敏感に反応し変化し、常に時代の好む顔や体形を、そのひとがたに表現して来た。マネキン会社の倉庫には、夥しい数の裸のマネキンが,ところ狭しと並べられている。これら装わない素のマネキン達の集う倉庫には、流行の衣装をまといスポットライトをあびて華やかに装うディスプレーの場などでは見られない、異なった別の魅惑的な空間がある。1966年、ふとしたきっかけから、あるマネキン会社の配集センターでマネキン人形を見る機会を得た春田さんは、薄暗い倉庫の中の裸の美女達(マネキン)の美しさに息を呑む思いをしたのが最初の出会いであった。以来マネキンの魅力に取り付かれてマネキンの撮影を始めたと語っている。 以来40年以上過ぎた今日、マネキンもずいぶん変わりました。倉庫は近代化が進み、照明は明るく均一化され、マネキンの商品管理にはコンピュータが導入されるなど倉庫のより効率的活用が図られている。それだけに被写体として、ドキッとするようなショッキングな光景に出会うチャンスは少なくなったと思う。一方多様化されたニーズの変化に伴い、いろいろな異なったタイプのマネキン達との出会いが増えたのではないだろうか。日本のマネキン業はレンタルシステムで成り立っている。倉庫には、生産工場から納品される新作マネキン、市場で役目を終えて返送されるマネキン、修理のために運び込まれる傷ついたマネキン、リメイクされたマネキンなど、商品としてのマネキンの一生の縮図を見る事が出来る。レンタル業における倉庫は物流の要であり企業秘密の場でもあり関係者以外立ち入りを許されない場所。そこを撮影する事は企業の理解と協力がなくては不可能な事である。8社ものマネキン会社の倉庫を撮影できた事は全く異例の事で、春田さんのマネキンを愛する一途な思いやマネキンの魅力をカメラで残し次の時代に伝えたいと言う使命感ともいえる強い思い、更に氏の作品の優れた芸術性が理解され、企業の好意的な協力が得られたのだと思う。