まよ子(5) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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「書斎」の柱時計が午後3時を告げた。


◆すくらんぶるアートヴィレッジ◆(略称:SAV)    若い芸術家たちの作業場・みんなの芸術村-とけい1

祖父が亡くなってからは、誰も調整しないので時計の針は狂ったまま。でも、時報だけはほぼ正確に告げてくれる。


「もう、こんな時間」


空腹感に襲われて、画集を閉じる。

本棚にもどそうと立ち上がった時、本棚の奥に見慣れない文箱を発見した。

数冊の画集を引っ張り出し、ようやく箱を取り出すことができた。


◆すくらんぶるアートヴィレッジ◆(略称:SAV)    若い芸術家たちの作業場・みんなの芸術村-ふばこ

美しい「蝶」の蒔絵が施された文箱、しばらく眺め箱をあけようとして思いとどまった。

「楽しみは、後にとっておくものだよ」

祖父が、だだをこねる「まよ子」に言い聞かせた言葉である。

「まずは、腹ごしらえ」

と、書斎を出て台所に向かった。


テーブルの上に、母からの伝言。

「よく寝て、よく食べ、よく考えろ」

用意されていたサンドイッチをほおばりながら、涙がこぼれてきた。

「だって思春期なんだから」

とつぶやく。

「うわあ、やられた」

最後の一つには、たっぷりとカラシが仕込まれていたのである。

母の笑い声が聞こえるようで、また涙がこぼれた。

口直しのミルクをたっぷりとグラスに注ぎ、半分を飲み干してから

「いざ出陣」

これも、よく祖父が口にした言葉である。


「書斎」にもどって、もう一度文箱をながめる。見る角度によって色が変化し、中に入れられている物への関心が高まる。ゆっくりと蓋を持ち上げると、これまで閉じ込められていた空気と時間が一瞬にして融け、外気を吸い込む。


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「やっぱり」

箱を覗き込んで「まよ子」は大きく頷いた。予想どおりであった。あれだけ相撲好きだった祖父にもかかわらず、この「書斎」には相撲に関する書物や資料が見当たらないのである。小さい時は気にもならなかったのだが、「まよ子」が中学生になった頃から祖父の体調が思わしくなく、大好きだった相撲見物もままならない状態であった。


「たっちゃん残念だね。せめて相撲の本や写真でもあったらいいのに」

と「まよ子」が慰めると

「よっこ、相撲は真剣勝負だよ」

と祖父は笑った。その気持ちが痛いほどわかる「まよ子」に成長していた。


「これって浮世絵。すごいなあ、はじめての本物」

緊張と興奮で、箱からうまく取り出せない。

一枚一枚を丁寧に床に並べていく。並べられなくなったところで、じっくりとまた一枚一枚を鑑賞する。

「ずごい、すごい」

を連発する。そんな様子を他人が見たら、きっと奇妙な光景であったろう。

ようやくすべての浮世絵を見終わり、丁寧にまとめて箱にもどそうとして、何か不思議な感覚に襲われた。

箱の大きさと深さが微妙にずれているような

「あれ、なんかおかしいなあ」

と箱を持ち上げて確かめてみた。

「やっぱり」


「まよ子」の好奇心旺盛は、まさしく祖父ゆずりであった。・・・つづく


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最近、カエルのことを書いていませんでした。会員さんが東南アジアに旅行されて・・・おみやげ。キャラメル味のポップコーン?とカエル絵本です。


◆すくらんぶるアートヴィレッジ◆(略称:SAV)    若い芸術家たちの作業場・みんなの芸術村-きゅび

横顔をキュビズム風に作った発泡スチロール作品に新聞紙コラージュしました。


◆すくらんぶるアートヴィレッジ◆(略称:SAV)    若い芸術家たちの作業場・みんなの芸術村-ほんやき1

陶芸窯小屋で本焼き準備が始まりました。


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今回はお皿もいっぱいあります。