祖父は自分の部屋を「書斎」と呼んでいました。
「まよ子」にはその意味はわかりませんでしたが、「しょさい」という響きが気に入ったようで、祖父にせがんで部屋に行くことが多くなりました。家のどことも違う空間がそこにあり、甘い葡萄の香りがしました。
「たっちゃん、ぶどうたべた?」
「どうして、そうおもうの?」
「においがする」
「そうか、よっこにはぶどうなんだ」
と言って、祖父は机の上のパイプを見せてくれました。
「たっちゃんは、それでぶどうたべるの?」
祖父は大笑いしながら、パイプの話をいろいろ聞かせてくれました。
「まよ子、またおじいちゃんの部屋で遊んでいるのね」
そんな母の声が響いて、楽しい書斎での時間に終止符がうたれる。
「たっちゃん、またあしたね」
すかさず母は、「たっちゃんと呼ぶのはおやめなさい」とたしなめた。
祖父は、その道の人たちから「たっちゃん」と呼ばれており、母はそのことをとても嫌っていたのである。
懐かしい書斎での会話を思い出しながら、アルチンボルドの画集をなにげなく開いてみた。そして、あまりにもユニークな絵の数々に思わず吹き出してしまった。「まよ子」が大声で笑ったのは、本当に久しぶりのことであった。そして、次から次へと画集を開いた。それは、まるで何か大切なものを探しているかのようでもあった。
ピエロ・ディ・コジモ
サンドロ・ボッティチェリ
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
「う~ん、違うなあ。どうしても、思い出せない。」
「まよ子」は、時間を忘れて夢中になっていた。・・・つづく
久しぶりに・・・「編む」
「七宝編み」の予定でしたが・・・
「平結び」になってしまいました
「のれん」にするなら、そろそろ終わらなければならないのですが・・・
ついつい編みすぎてしまって・・・
とうとう「網」になってしまいました。
台所と道具庫の間仕切りとしてぶらさげました。