きらっ(190) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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ひゃくねず(百鼠)4


「ボラ」は、大きくなるにつれて呼び名が変わる出世魚(関東-オボコ→イナッコ→スバシリ→イナ→ボラ→トド )で、様々な言葉の語源となった。「オボコ」は、子供などの幼い様子や、可愛いことを表す「おぼこい」の語源。「イナ」は、若い衆の髷の青々とした剃り跡をイナの青灰色でざらついた背中に見立て、「いなせ」の語源とも言われる。若い衆が粋に見せるために跳ね上げた髷の形をイナの背びれの形に例え「鯔背銀杏(いなせいちょう)」と呼んだという説もある。「トド」は、「これ以上大きくならない」ことから「とどのつまり」の語源となった。


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江戸時代の「粋(いき)」を大人の美学とするならば、「鯔背(いなせ)」は、大人(一人前)になる一歩手前の若い衆が意気がって(大人ぶって)「粋」に見せようとする様子をいう。最近は、「粋」と「いなせ」が混同されることが多い。たとえば、「粋でいなせな…」という表現は、個人ではなく、様々な年代を含む集団に対して使う言葉であり、「粋」と「いなせ」は同じではない。


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江戸時代には「灰色」というよりは、「鼠色」と呼ばれたのは、長屋住まいの庶民には鼠と同居しているような状態で暮らしていたため、鼠の色が身近な灰色であった。この「鼠色」という色名は室町時代から江戸時代に登場したと考えられている。当時は茶色と鼠色は粋な色として特に好まれ、俗に「四十八茶百鼠」と言われる位、鼠がかった色がたくさん現れた。その背景には 高価な紅花染めの紅梅色や紫根染めの本紫は江戸初期より庶民には禁じられている色であり、幕府の禁令では茶、鼠などの染色は「おかまいなし」であった。このように染色の制限が設けられている中でも「粋で洒落」を好む江戸人の色彩感覚にこれらの色が適合していった。鼠系の色に関しては、特に江戸中期から後期にかけて「~鼠」と称する微妙で豊かな色調が生まれてきた。(利休鼠、桜鼠、梅鼠,深川鼠、鳩羽鼠、藍鼠、錆鼠、相思鼠、銀鼠)多様な鼠色が登場、流行した背景のひとつには染料を手に入れやすいこともあった。染料はくぬぎ、なら、栗、樫など様々だが、いずれも煎じて使い、鉄媒染めをして染めていた。


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九鬼周造は著作『いきの構造』において「第一に鼠色は『いき』なものである。鼠色、即ち灰色は白から黒に推移する無色感覚の段階である。そうして、色彩感覚のすべての色調が飽和の度を減じたときは灰色になってしまう。灰色は飽和度の減少、色の淡さそのものを表している光景である。『いき』のうちの『諦め』を色彩として表現すれば、灰色ほど適切な色は他にない。第二は褐色すなわち茶色ほど『いき』な色として好まれる色は他にないであろう。『思いそめ茶の江戸褄に』という言葉によく表れている。また茶色は種々の色調に応じて実に無数の名で呼ばれている。(中略)第三に青系統の色は何故『いき』であるか。(中略)青中心の冷たい色の方が『いき』であると言いうる。紫のうちでは赤がちの京紫よりも青がちの江戸紫の方が『いき』と見なされる」などと述べている。
以上のように久鬼周造は、江戸町人の「いき」色について、青、鼠、茶色を挙げた。江戸町人たちは、特に茶、鼠の微妙な色調の相違を愛で、「四十八茶、百鼠」として愛好し、この2色の地味色に限りない愛着を示した。これらの色は「わび茶」の創始者・千利休がことのほか愛好した色-茶室、備前、信楽の器、鼠志野-であり、この伝統は今日まで、ナチュラルカラー、エコロジーカラーを愛好する色嗜好とつながっていく。
また青色は藍から生まれた色であり、江戸時代以前から、労働着、野良着の色として、ことのほか愛好されていた。特に藍染の藍は、江戸時代には奢侈禁止令の影響から、一般町人の街着として定着して、「いき」を代表する色として愛好された。この青(藍色)に対する色嗜好は、現在まで脈々として継続しており、さまざまな機会に現れている。特にファッションの分野では、58年、アメリカ映画『初恋』の折、モーニング・スター・ブルーとして流行したのをはじめとして、ジェームス・ディーン主演の『エデンの東』『理由なき反抗』以来、ジーンズ(元来はアメリカ・カウボーイの労働着である)が定着し、その後も、88年(昭和63年) の青ブーム、99年(平成11年)のジーンズブームとして、今なお流行を続けている。


桜鼠(さくらねず)くすんだピンク色がほのかに灰色に見えたため
梅鼠(うめねず)
暁鼠(あかつきねず)
小町鼠(こまちねず)日本歴史上最高の美女、小野小町から名を取った色
銀鼠(ぎんねず)
薄雲鼠(うすくもねず)
中鼠(なかねず)明るくも暗くもない、中間の鼠色
鉄鼠(てつねず)昔の商店の番頭や手代の前掛けの色によく用いられた
錆鼠(さびねず)
遠州鼠(えんしゅうねず)大名茶人で建築、造園の天才であった小堀遠州の品格のある色
鳩羽鼠(はとばねず)庶民の着物の色に多く使われた土鳩の羽のような紫ぎみの鼠色
紫鼠(むらさきねず)和服の色の花形である紫系の色
貴族鼠(きぞくねず)当時、古代ゆかしき上品な色の代表として売物とした紫系鼠色
壁鼠(かべねず)壁土の色からとられた茶系の鼠
濃鼠(こいねず)黒に近い暗い鼠色
湊鼠(みなとねず)当時、大阪の湊村で作られていた壁や襖に使われた湊紙に似ている
茶鼠(ちゃねず)茶の色名にも鼠茶があるのと同様、鼠色にも茶鼠がある
臙脂鼠(えんじねず)
紅鼠(べにねず)
生壁鼠(なまかべねず)生壁の色、きわめて具体的な色名
浪花鼠(なにわねず)浪花といわれたそのころの大阪の鼠色という意味らしい
黄鼠(きねず)
山吹鼠(やまぶきねず)
深川鼠(ふかがわねず)
淀鼠(よどねず)
松葉鼠(まつばねず)
呉竹鼠(くれたけねず)京都御所の清涼殿の庭園にある中国渡来の竹の一種を呉竹という
千草鼠(ちぐさねず)
都鼠(みやこねず)京の都の上品でみやびやかな感じの鼠色
浅葱鼠(あさぎねず)
紺鼠(こんねず)
藤鼠(ふじねず)
小豆鼠(あずきねず)
嵯峨鼠(さがねず)渋く上品な茶色がかった鼠色
牡丹鼠(ぼたんねず)
玉子鼠(たまごねず)かなり派手な黄色がくすんだ色
利休鼠(りきゅうねず)利休(千宗昜)が好んだ色、又はお茶を連想する緑色ぎみの鼠
鴨川鼠(かもがわねず)
浮草鼠(うきくさねず)
青柳鼠(あおやぎねず)
島松鼠(しままつねず)緑色ぎみの鼠色
納戸鼠(なんどねず)和服の世界で良く使われる納戸色、くすんだ色
水色鼠(みずいろねず)
藍鼠(あいねず)青色ぎみのある鼠色であることを表すには藍をつけるのがわかりやすい
葡萄鼠(ぶどうねず)古代の葡萄(えび)染めの色に近い紫系
白梅鼠(しらうめねず)
薄梅鼠(うすうめねず)
藍生鼠(あいおいねず)相生(あいおい)にかけたしゃれである、ともに長生きとの縁起
鴾色鼠(ときいろねず)
白鼠(しろねず)
御召鼠(おめしねず)着物の尊敬語を御召というが、高級な着物にふさわし上品な鼠色
絹鼠(きぬねず)
薄鼠(うすねず)
茶気鼠(ちゃけねず)わずかに茶の感じのする鼠色
江戸鼠(えどねず)江戸茶と同様に江戸好みの鼠色を言うらしい
繁鼠(しげねず)200年以上も続いた泰平の世、染職人は色の違いを染分けた
黒鼠(くろねず)まさにオフブラックの鼠色
桔梗鼠(ききょうねず)やや青みのある桔梗色を鼠色に混ぜた色
軍勝鼠(ぐんかつねず)意味は不明だが、鉄色のような鼠色のことだと言う
源氏鼠(げんじねず)貴族のなかの貴族「光源氏」、上品な紫系の鼠の頂点
相思鼠(そうしねず)
素鼠(すねず)江戸時代、千差万別の鼠色のなかで、本家本元の鼠色