灰との出会い(10)
数学や理科が苦手だった私にとって、炭や灰を調べていると頭の痛いことがあまりにも多い。特に、その成分など物質名の一つ一つがわからず、今さらながら勉強しているところである。
■植物は水と光と金属類などの助けを借りて、二酸化炭素を吸収して光合成により必要な成分を作り出し木々を大きくしていく。新芽が出たころはアルカリ金属のカリウムが大量に必要になり、その後はリンが大量に必要になってくる。
■木や竹から炭を作るには、伐採された木や竹を燃やさないで高熱を加えることによって、木に含まれる成分を蒸発させたり、熱分解させたり、また成分を酸化還元反応をすることにより、色々な成分を木や竹から追い出すことにより炭が出来る。セルロースやヘミセルロース類(200℃前後)やリグニン(400℃前後)などが高熱により熱化学反応をして木の中から出て行く。この追い出された物質は木や竹の外へ煙として出ていってしまい、残った物質が炭となる。この残った成分の中で一番多く残っているのが炭素、そのほかにも熱に強い成分も含まれている。この成分を一般的には、ミネラルと呼ぶ(一般的には灰分と言う)。植物に含まれている成分でカリウム、カルシュウム、マグネシュウムなどの金属は酸化物になり水に溶けるとアルカリ水溶液になり、酸性土壌に撒くと中和する。要するに、炭とは木や竹に熱を加えて、炭素以外の成分を追い出した、残り物の残りかす(粕)が炭ということになる。
■また煙の中の成分をステンレスの煙突に通して外側を冷却すると、煙の中の成分が液体になって回収される。木の場合には木酢液、竹の場合には竹酢液と呼ばれ、この成分の主なものは3%~5%の濃度の酢酸やぎさん(蟻酸)など300種類以上の成分が多く含まれており、pHを測って見ると濃いものでpH2.2程度から薄いものでpH3.8位の酸性を示す。
■炭を燃やすと、炭の中の炭素は空気中の酸素と反応(燃える)することにより、二酸化炭素と熱に変わり植物が吸収した金属成分は酸化物に変わる。このときの熱量は炭1gで29.4kj(7kcal/g)と言われており、炭の熱パワーはもの凄い。この炭が燃える時に酸素の供給量が少ないと、危険な一酸化炭素が出来る。もし人間が一酸化炭素を含んだ空気を吸うと、血液のヘモグロビンと結合して、体に必要な酸素が付かなくなり、酸素を身体の中に運べなくなり、細胞が酸欠の状態となり、人間は危険な状態になってしまう。炭が完全に燃えると、一般には灰と呼ばれる物質が残り、この灰を水に溶かしてpHをはかってみると、一般的にアルカリ性を示す。
■炭酸カリウムは、陸上植物の灰に10 - 30%程度含まれるカリウム塩。工業的にはカリウム塩の中で最も重要な化合物である。炭ボツや真珠灰と呼ばれていた。化学式K2CO3、式量138.21(無機イオンの結晶であるため、分子量が意味を持たないため、式量で表す)。CAS登録番号は584-08-7。
化学が成立する以前から、灰を水に溶かして炭酸カリウムを得ていた。1世紀に記述された大プリニウスの『博物誌』には、ガリア人が石鹸を発明し、原料は灰と獣脂であると書かれている。日本ではナトリウムを用いた石鹸が主流だが、ナトリウム石鹸に比べてカリ石鹸は冷水に対する溶解度が大きいため、液体石鹸として生産されている。さらに、ガラスの原料としても欠かせない。ブラウン管用のガラスやクリスタルガラスに用いられる。食品工業では中華そば用のかんすいとして使われている。
現在、工業的には塩化カリウムを電解して水酸化カリウムを得、これに二酸化炭素を吸収させている。
2KOH + CO2 → K2CO3 + H2O
工業分野での炭酸カリウムの2004年度日本国内生産量は64,112t(1998年は7万3000t)、消費量は318tである。
水に対する溶解度が高く、112g/100g(水、20℃)に達する。これは炭酸ナトリウム(21.5g)と大きく異なる。水溶液は加水分解のためpH11程度のかなり強いアルカリ性を示す。空気中に放置すると、二酸化炭素を吸収して炭酸水素カリウム(重炭酸カリウム)に変化する。白色で無臭。比重は2.428。融点は891℃。
助燃触媒として有効であり、木炭の着火性や火縄銃の火縄が立ち消えないことは炭酸カリウムの存在による。木炭を流水中に漬けておくとほとんど火がつかなくなることは古来知られていたが、それが炭酸カリウムの流出による現象であることは近代になるまで誰も気がつかなかった。草木灰から得られる炭酸カリウムはpotash(カリウムの英名「ポタシウム」の語源)と呼ばれ、文字通り「壷の灰」として油汚れを落とすアルカリ液に用いられた。これは油脂を鹸化する力が強くオーブンなどの清掃に有効である。余熱のあるうちに雑巾につけた炭酸カリウム濃厚液を塗りつけてこすると非常にきれいになるが、目に入らぬよう注意せねばならない。またゴム手袋の着用も不可欠である。