灰との出会い(9)
藍染の準備にあたって「灰」を調達しなければならなくなり、樫灰の「灰汁」が良いとのことで探し回ったがなかなか見つからず、仕方なく「橡灰」を入手することにした。さらに、樫灰が駄目なら「樫炭」や「樫薪」から灰をつくることも考えて、カマドづくりに取り組んだ。偶然ではあるが、樫炭を購入した愛媛県今治市大三島の釜元に問い合わせたところ、次の炭焼きで生じる「樫灰」をわけていただけることになった。
樫灰だけでなく新聞記事や「木酢液」まで箱詰めされており、せっかくの灰を大切に使用しなければならないと痛感している。
木酢液は、自然木を炭焼きしたとき、比較的初期に出てくる煙を煙突で冷やして採れる水滴、これを精製したものが木酢液である。血液や海水のように人工では作ることができない樹木の生命力がたっぷりと含まれており、主成分は酢酸で、ポリフェノール、エステル(酸とアルコールの化合物)など200種類前後の成分を含んでいる。原液は強い殺菌力を持っており、一般的には数百倍から2千倍に薄められ、植物への土壌灌注、葉面散布や、畜産飼料、食品、医薬品などに利用されている。その効果は、主成分と有機化合物の広い領域の多種多様で、とらえどころのない化合物が多数存在することでなりたっている。木酢液は人畜に安全で、生活環境や農・畜・水産業の生産物の収量と品質向上に幅広く応用されている。
●生活環境・・・入浴料として肌の調子を整えたり、体を温めたりする。また、脱臭用にトイレ使用後にスプレーをしたり、スキー場の便槽や各種容器などへの投入など幅広く利用されている。
●農業・・・土壌の微・小生物の活性、堆肥の悪臭除去と腐熟促進、葉や根を元気にする。また、にんにくやとうがらし、魚腸などをを漬けた木酢液を希釈して散布すると一層よい効果もある。
●畜産・・・飼料に混ぜて与えることで、肉質が良くなり、臭みも減る効果や、卵の味が濃厚になり甘みが増すことも報告されている。また、ふん尿の脱臭としても利用されている。
●水産業・・・餌料に混ぜて与える事で、うなぎ養殖での病気の発生を著しく減少させたり、ブリの養殖では、内臓量が少なく、肉質が良くなった例が報告されている。
●その他・・・木酢液独特の香気、脱臭力は食品の鮮度保持、品質向上。また、肉、ハム、ソーセージ、ソース、かつお節、干物、くん製品では、酸化防止に役立っている。
これで概ね・・・灰・炭・薪がそろったので、大きなプラスチック衣装ケースに収納し、間違えないように種類のネームプレートまでつけた。
初羽釜、今回はお湯を沸かすにとどめた。燃料は紙類であるが、カマドの性能も良くすぐに沸騰させることができた。
染色工房の夜はふける・・・屋外作業場の照明も美しく、いい感じです。
白炭は主にウバメカシ、アオガシ、ナラなどを炭化させる木炭である。白炭は、専用の石窯で、木材を熱分解し、炭化がほぼ終了した頃に窯を開け、赤熱した炭を取り出し素灰を掛けて消火して作る。白炭はとても硬質で、断面には特有の光沢が見られる。硬質な白炭は赤外線が多く発生し、長時間燃えるが、その反面火付けが難しく、黒炭と併用するのが一般的である。都市ガスが無い時代は、備長炭の着火が難しいため、薪等に火を点けて黒炭に着火することを経て備長炭に火を点けたが、現在はガスで火起しという道具で着火するので黒炭との併用は一般的ではない。
■白炭は、火持ちが良く遠赤外線が黒炭よりも多く発生するため、焼き物に最適である。完全に着火すると炎が立たず、上焦げが無く綺麗に中まで火が通り美味しく焼ける。ただし白炭は黒炭よりも水分やにおいの吸収率が大きく一月も置いておくと比重が変わってしまう。そのため、保存状態が悪いと爆跳や煙が発生しやすくなり、危険かつ食材がおいしく焼けないなどの難点がある。 白炭は黒炭の製炭方法とは違い製炭工程の最後で釜に大量の空気を送り、まだ燃えている炭材を釜の外に引き出して素灰で消火するため炭化度が高く不純物が少ないので、本来は煙は発生しにくい。また、爆跳については、急激に熱を加えた時に起こりやすく、完全に着火した時には起きにくい。
■白炭には汚れや臭いを取り込む隙間が沢山ある。 それを生かして、飲み水の浄水や下水の再利用に使用されている。
白炭は、沢山の隙間に臭いや湿気を取り込むことが出来る。 また、黒炭に比べ形が壊れにくく、黒炭と比べ量も少しではあるが少なくできる。また、値段は高くなるが、長持ちし、湿気の呼び戻しが少ないことで床下でも安心して使用できる。
■白炭は調理にも使用できる。 木炭はアルカリ性であり、ご飯を炊くときなどは米がふっくらと炊きあがる。天ぷらを揚げる際も、油に入れておけばカラッとおいしく揚がると言われている。 炭は吸着性が良いのでご飯を炊くときに一緒に入れるとお米の旨味成分までも吸着してしまい、サッパリしたご飯になってしまう。そのためお米と一緒に炊かず炊き上がった炊飯器に炭を入れてやると、時間がたっても蒸れ臭さが緩和される。
黒炭は主にナラ、カシ、クヌギなどを炭化させた物を言う。黒炭は、専用の土窯で、木材を熱分解し、密閉して消火して作る木炭である。白炭と黒炭の違いは密度や、精錬法などにあり、白炭は精錬時、内部温度が1000度ほどになるのに比べ、黒炭は精錬時で400~700度とされている。また、消火方法にも違いがあり、白炭は窯の外で素灰を掛けて消火するが、黒炭の場合焚き口から蓋をし、煙突も蓋をして消し壺のように消火する。黒炭は白炭に比べ柔らかく、着火剤やバーナーで火を付けることができる。黒炭は高温短時間で燃焼するため、網焼の他、火鉢や囲炉裏でも使われる。
■黒炭の用途は様々で、各分野で有効利用されている。
鍛造には、高温で燃焼する黒炭が使われる。主に、松炭、栗炭、雑木炭が使われ、総称して鍛冶屋炭と呼ばれている。送風すると1000度以上の高温になるため、広く鍛造に使われる。家庭でも、黒炭と七輪、送風機が有れば、簡単な七輪鍛造を行うことができる。
■黒炭の用途の代表は燃料である。高温で燃焼するため、網焼だけでなく、鍋や暖房にも使用される。黒炭は火がつきやすいが、炎が立つ物は赤外線調理ができないため粗悪とされる。黒炭は、小さな隙間が沢山あり、そこに湿気やにおいを吸着することができる。部屋や収納スペースの脱臭・除湿のほか、床下に敷き詰めて家屋全体の除湿にも用いられる。
灰は・・・美しい。