ぎょ(680) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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和紙魚(1)


みず1


■透明に透ける「水うちわ」。この団扇に張ってあるのは、美濃の手漉き和紙職人のコルソヤードによる、雁皮(ガンピ)紙と呼ばれる正真正銘、本物の「美濃手漉き和紙」です。雁皮紙とは、文字通り雁皮と呼ばれる植物の皮を使って漉く和紙です。


みず2


この植物の繊維は、手漉き和紙で一般的に使われる「楮」のそれよりも細く繊細です。それ故に雁皮を漉いた和紙は強く、均一かつ透明感のある和紙に仕上がります。かつては、「謄写版」または「ガリ版」と呼ばれた印刷機で使用された原紙「ガリ版原紙」としても、数多く製造されていました。しかし、最近では、厚いものを除いてはいつの間にか作られない存在になっていました。その理由は謄写版原紙としての需要が無くなった事も一因ですが、雁皮紙が、漉き手泣かせな紙でもあるからが大きな理由です。


みず3


手漉き和紙を作る時に最も時間を費やす作業は、和紙を漉く時ではありません。その和紙を漉くための下準備、準備作業である原料の処理の時なのです。綺麗な和紙を漉くには原料も綺麗にする必要があります。例えば一般的には、漂白剤を利用して、ゴミも白くして見えなくしてしまえば簡単ですが、コルソヤードの作る和紙にはそんな「ごまかし」はいっさいありません。彼らは、雁皮の細い繊維についた塵を、冷水の中、手で1つずつ丁寧に取り除き、長い時間をかけて、原料の下準備を行います。こうして、はじめてフイルムと間違える程の透明感のある、とても薄く漉き上げた雁皮紙が完成し、その紙を張る事によって、美しい本物の水うちわを作り上げることが可能となりました。「水うちわ」は、水につけて、濡れた団扇を扇いだ時に飛ぶ水しぶきを楽しむ風流な遊びも味わえます。まるで「水饅頭」の様につるりとした透明感と、水に濡れても破れない強さを出すために、団扇には特別なニスが塗られています。「ニス」と聞くと、何となく化学的な有機溶剤を使った石油製品を想像される方が一般的ですが、実は「水うちわ」に塗ってあるニスは天然のものなのです。あの世界的に有名なバイオリンや、身近なマーブルチョコレートなどの表面にも塗られたりしているものと同じもので、美味しくはないですが、口に入れても安全なものなのです。


みず4