ぎょ(503) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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魚がギター(3)


ほーる1


象嵌はサウンドホールの装飾としても施されています。


ほーる2


■ヘリンボーン(Herringbone)1

これは古いマーチンギターを語るときに、最も頻繁に出てくる単語です。マーチンのD-28に始まるギターやアストリアスのヘリンボーンシリーズが有名ですが、「ヘリンボーン」とは"魚(ニシン)の骨"のことです。ロマンティックギター、クラシックギター等でも割と見かけるロゼットや胴の縁飾りのデザインパターンのことで、編物の模様編みやタイル貼り、装飾品のデザインでも基本パターンの一つです。矢(印)の組合わせのような模様です。良く見ればわかるように斜線が基本です。herring = (魚)ニシン、bone = 骨、なんとなくイメージできます。


へりん1

ヘリンボーンは、1900年以前から1940年代まで、スタイル28のギターの表板を縁取るバインディングの内側にある模様を指します。模様の大きさは年代によって若干異なるのですが、基本的なパターンは同じです。スタイル21のギターでは、サウンドホールの周囲やバックのセンターに使われたこともあります。このヘリンボーンという素材の使われ方については、よく誤解されている場合があります。それは、マーチンではヘリンボーンがあるギターとないギターという、2種類のスタイル28のギターを並行して作っていたというものです。実際には、この細工はサイズに関係なく、1946年に廃止になるまで、すべてのスタイル28に施されているものです。最初は、マーチンギターに使われるすべての細工はヨーロッパから取り寄せていました。ドイツ人は、寄木細工や木で彩るインレイのデザインや加工、真珠貝の細工技術などに優れた技術を持っていたのですが、供給の問題でデザインの変更を余儀なくされます。寄木細工はアメリカ国内でも(ドイツ人によって)長年作られていたのですが、零細企業のために人手不足となることが多く、満足できる品質が維持されないため、マーチンでもヘリンボーンの廃止を決めます。その頃までに、プラスチックがいろんなところで使えるまで品質が向上していましたので、#98233から、すべてのスタイル28のギターで、ヘリンボーンの代わりに、白と黒の縁取りに変更します。ただし、変更時期に作られたギターでは、ヘリンボーンと白黒ラインが混ざって作られており、正確な台数の区別はされていません。1970年代も中盤になると、ヘリンボーンを施したギターに対する要求が高まったため、“ヘリンボーンD-28”をレギュラーラインに登場させます。今では、白黒ライン模様の通常のD-28と区別するために、HD-28と呼ばれています。その後、HD-35をはじめとして、いろんなモデルや復刻版、カスタムギターなどでヘリンボーンが使われており、建国200年記念限定モデルであるD-76にも使われています。


へりん2


■ヘリンボーン(Herringbone)2

ツイードのコートやジャケットによく使われる白と黒、白と茶を基本の配色とする馴染みの深い柄です。同じ柄でも西洋人が見るとヘーリング(鰊)のボーン(骨)と映り、われわれ日本人には「杉」にみえます。農耕民族と狩猟民族の違いがこんなところにも出ているのでしょう。杉綾は流行に関係なく各社の新柄コレクションに加えられています。オーバーコートやカジュアルなジャケットには、山が高く、幅の広いものを使います。クラシックな感覚のスーツ地には、山を低くして、巾の狭いもので対応します。コート、ジャケット、スーツとあらゆるものに使えるのが、ヘリンボーンの人気を支える原動力になっています。柄が杉の葉の形に良く似ているところから、杉綾織 、杉柄模様などと呼ばれているこの柄は、山と谷の連続する単純な柄で、そのシンプルさが幸いして、紳士服地の基本柄の一つとして、認知されています。色使いも白と黒、グレーと黒、白と茶など、コントラストをなす2色使いのものが中心となっています。どちらかといえば英国人好みの柄で、1896年、英国にこの柄が登場して以来、流行に関わりなく、コレクションに加えられています。


ツイード


特にスコットランド地方が主産地であるチェビオット、スコッチツィード、ハリスツィードなどの紡毛服地に多く採用されています。話は変わりますが、「ヘリンボーン」という言葉は造園業界でも用いられています。煉瓦を斜めに組み合わせて鰊の骨のような山形を作っていく手法です。庭園の小道などをこのやり方で煉瓦を敷き詰めると何となくロマンチックな雰囲気が醸成されるといいます。もう一つはネックレスです。金属加工の方法でしょうが、やや太めのネックレスには山形が連続したような作りのものを見かけます。昔のギターで一部分が組木づくりになっているものも、ヘリンボーン・ギターと呼ばれているようです。日本人には「杉」と映るこの柄はスコットランド人の目には「鰊(にしん)の骨」に見えるらしく、ヘリンボーンと呼ばれています。北海道の小樽にかつて鰊が捨てるほどたくさん捕れたモニューメントとして、鰊屋敷がいまに残されていますが、スコットランドでも鰊が大量に捕れた時期があり、一般大衆には馴染み深い魚となっていたため、ためらうことなく、ヘリンボーンと名付けられたのでしょう。この柄はシェブロン (袖章)、フェザー (羽根)、アロー・ウッド (矢じり)、アップ・アンド・ダウン (山と谷)、バーズ・ウィング (鳥のつばさ)、ポインテッド・ツィール (山形綾)など多くの別名を持っています。柄を大きくするとオーバーコートやカジュアルなジャケットに最適のものとなります。小さくするとクラシックな感覚のスーツ地用のパターンとして使えます。さらに山や谷をわざと変形させてブロークン・ヘリンボーンとして用いられることもあります。


へりん3


■ロゼット(英:rosette西:roseta)口輪

サウンドホール(boca)まわりの飾りです。多くの普及タイプは、プリントしてあったり、プリント板のはめ込みですが、雰囲気のあるやつは、ここが木象嵌でできています(たまに螺鈿も)。鍵盤楽器でつかわれていた装飾法を、ルネサンスギター、リュートなどでも多用した時代がありました。現代アコースティックの基礎を作ったトーレスにも飾ったギターがあるようですが、彼の基本は、質実剛健、音第一主義。ギターに着飾る事を止めさせたのも彼。多くのロゼットは、木象嵌です。スペインの物は、taracea と言い、1mm,0.2mmとかの多種の角材を重ねて圧着してできた板をスライスして、表板の浅く削った部分にデザイン通り並べて埋めこむ。幾何学的な模様の繰り返しが出来ることからモザイク模様となり、mosaic rosette と呼ばれる(スペインの工芸品ではグラナダが有名)。また木象嵌でも、より大きな材片を埋めこんでいく(布のキルトみたい)方法は、産業革命時代の英国で発展し英:marquetry と呼ばれます。ギターの表板と側板の接合部分の縁飾りは パーフリング purfling(西:cenefa)。ギターのヘッドギアの金属面の装飾ではスペイントレドが金銀細工の有名所(超高級品では金銀象嵌)。西班牙語で Damasquinado といい、スペルから想像できるように紀元前シリアのダマスカスあたりが発祥といわれています。また、ロセタや、スティール弦で良く使用される装飾に薄く削った貝殻をはめ込む螺鈿(インレイ inlay)があります。


へりん4