ぎょ(500) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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春はサクラ(5)


ほし1


■サクラボシ(桜干)

みりん干は大正年代初期に九州地方でいわしを醤油に漬けて乾燥した製品が始まりとされています。その後、製造法に改良が加えられ、調味液にみりん、砂糖、水飴、食塩等が使用されるようになり、風味と滋養に富む手軽な保存食品として広く全国各地で生産されるようになりました。製品の種類は必ずしもいわし類の桜干、みりん干だけでなく、それぞれの地元に水揚げされる、あじ、さば、さんま、かわはぎ、ふぐ、さより、きす等を原料魚として製品化されるなど多種多様なものがあります。


ほし2


桜干の原料魚も当初は地元に大量に水揚げされていたまいわし(小中羽と言われる小型のまいわしが使われていました)でしたが、昭和20年代後半よりまいわしが激減しそれにとって代わった片口いわしを原料とするようになりました。30年代に入るとまいわしの桜干はほとんど姿を消し、その頃の主要生産品であった片口いわしの桜干が波崎地区の商品イメージとして定着しました。その後まいわし漁が復活し、再びまいわしの桜干が生産されるようになりましたが片口いわしが桜干の主要な原料魚として定着し今に至っています。現在は桜干の原料魚としてのまいわしの資源がほぼ皆無に近い状況で、まいわし桜干の生産もここ数年途絶えたままです。


ほし3


桜干は水分含有が少なく調味液の砂糖及び食塩が浸透して保存性が高められているため、比較的長期の保存が可能です。(脂肪含有量の多い原料魚から製造したものや漬け込み、乾燥の不十分なものは短期間に変質して油やけを起こし、表面の色調が黄色や赤褐色に変色して品質低下し、食べると渋みが生じるものもあります)


ほし4


みりん干を桜干と呼ぶようになったのは次のような謂れがあります。
1. 原料のマイワシは、桜の季節である3月~4月のものが脂肪が少なくみりん干に最適とされ、冷凍技術の無い頃はこの時期が製品の最盛期であったことから
2. 魚を開いて干したそのかたちが桜の花びらに似ていることから
3. 桜の如く花開くように(末広干の名称にも一致する)広がるようにと生産者の願いを込めて
謂れには諸説ありますが、そのどれも間違いではないでしょう。しかしその桜干の名称が全国的に使われるようになったのは、次のような経緯が有ります。


ほし5


昭和6年当時、「みりん干」は嗜好品扱いの食品として鉄道の輸送費が高く設定されていました。そこで当時の鉄道省に陳情し、「みりん」という名称を使わないで申請すれば輸送費の安い惣菜品として出荷出来る事となり「桜干」として申請、輸送するようにしたのです。その後各業者も同名称を使用したことから、桜干の名称が定着していったようです。


ほし6


昭和6年に鉄道省へ陳情した記録(波崎町資料)には既に桜干の名称が使われています。公的な記録で桜干の名称を記載しているのはおそらくこの資料が最も古いものだと思います。これによるとこの当時既に桜干の名称が一般的だったと考えられます。記録にはみりん干ではなく、「桜干(末広干トモ言フ)」と記されており、「内地(国内)ハ勿論台湾、朝鮮、満州方面ニ至ル迄全国クマナク輸送消費セラレツツアリ」となっており、桜干はかなり広く認知され、消費されていたと推測されます。


ほし7