ぎょ(362) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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魚石(5)


▼石の魚(1)
いしさかな1


■昔、長崎で商売をしていた伊勢屋に、仲のいい中国人が帰国の別れを告げにやってきた。挨拶が済んだ中国人は、帰りがけに土蔵の石垣をじっと見ていたが一つの青い石を指さして、「この石を譲っていただけないでしょうか。」と真剣な顔をして、伊勢屋の主人に言った。主人はびっくりして、「この石をとりますと、石垣が崩れるのでそれだけはご勘弁ください。」と言って断ると、その中国人は百両出すと言い出した。それを聞くと伊勢屋の主人は急に欲がわき、一千両ならばというと、中国人は考えさせてくださいと言って、中国に帰って行った。主人は、中国人がああいうからにはきっと値打ちのある石だろうと、その青い石をとって磨かせてみた。だが光りもしないし、割ろうとしたが、堅すぎて、普通の人ではなかなか割ることができない。変に思った伊勢屋の主人は石屋を呼んで半分に割らせてみた。すると石の中から水がでて、それと一緒に赤い金魚のようなものが二匹飛び出してきてすぐに死んでしまった。その次の年、あの中国人が、三千両持って伊勢屋にやってきた。「あの石をぜひ三千両で譲ってください。」と言ったが、伊勢屋の主人は、実はこれこれしかじかで石を割ってしまったと言った。これを聞いた中国人は、涙を流して残念がり、「それは惜しいことをされました。実はあれは「魚石」という、世界に三つとはない貴重な石でした。あれを気長に周りから磨き上げると水の光が中から透き通って二匹の魚がその間を遊び回るという、美しいものです。朝夕それを見ていると、心が落ち着き、長生きをすると言われ、中国の高貴な人たちがほしがっていました。」「しかしただの金魚を見て、どうして長生きできるのでしょう。」「いや、中にいる魚は金魚ではなく、我々には知ることのできない生き物です。金魚がどうして石の中に何千年も生きておることができますか。」伊勢屋の主人はびっくりしてしまった。


▼石の魚(2)
いしさかな2



■秋田県【水魚石】「花の出羽路」菅江真澄翁より
伝え聞いた話だが、明和、安永の頃だろうか、この川端で蹴鞠ほどの石を割ってみたところ、魚が飛び出て流れたこれは世に言う水魚石というものではないかと云う。


▼石の魚(3)
いしさかな3


■青森県【魚龍石】深浦沿革誌より

むかしむかし、深浦のある問屋サ一人の船頭が泊まっていたんダド。その船頭が問屋の庭で藁打ち石ごと見つけで、その石ば2日もかがって磨いだんダド。磨き終わって、船頭が「水コ欲しナー」と喋ったドゴデ問屋の主人が鍋サ水コ入れで持って行ったんダド。船頭は、その藁打ち石バ丁寧に水の中サ入れだんダド。次の日、船頭ァ、「この石コ欲しナァー」って喋ったんダド。そした藁打ち石だッキャ、どこサでもあって、珍しくも何とも無いドゴデ、問屋の主人は 「イゴス(良いですよ)イゴス」 って喋ったら、船頭ァ、懐(ふとごろ)がらジェンコ出して、「礼ダネ」って 喋ったんダド。主人はビックリして「いーゴス(良いですよ)いーゴス」って喋ったら、船頭ァ、「ンダガ、ヘバ(そうすれば)この石ば見ナガ(見なさい)。」ってした(喋った)ので、主人ァ鍋の中(なが)バよぐ見ただら、石の中に小さくて綺麗な魚コ3匹も泳いでいだんダド。船頭ァ、まじめな顔して「この石ァ、魚龍石っていう大変な宝物だんだ。水コなぐなればマイネばって、水あれば何年でも何十年でも生ぎているんダネ。もう2-3日このままにしておけば、中の魚コァ死んでまって、只の石ころになってしまうドゴであった。」船頭ァ、この世サ二つと無い宝物だドゴデ(なので)、長崎まで行って売るつもりであったんダド。「売れだら、なんぼがお礼しねばマイネな。」って、その石バ貰い受けだんダド。それがらしばらくして、その問屋サ包みコ届いだドゴデ、開けてみたっキャ、五拾両もの大金が入ってあたんダド。


▼石の魚(4)
いしさかな4