「釜石大観音」で思い出したことがあります。以前、つげ義春さんについて書いた時、「魚石」のことはまた後で特集しますと約束していたのでした。ということで・・・
魚石(1)
中に生きた魚が封じ込められているという世にも珍しい石。これを見つけて丹念に磨いていると、やがて内で優雅に泳いでいる魚を見ることができると伝えられている。つげ義春もマンガ化している。
残念ながら、その実在は確認されていないことから、紹介する画像は「石」や「岩」に関する魚になります。
■石の中に空洞があって水が入っている。その石を極限まで磨き上げれば表面が薄くなり、中で遊び泳ぐ魚が見えるという逸物だ。魚はどうして生きる事が出来るのか、それは中に出来る藻などを食べるから。藻はどこから出来るのか、魚のフンから発生するらしい。つまり、この石の中で完結して生物の生き得るサイクルが起きているのである。魚石の構造上存在するのは奇跡的で、存在も確認されていない。空洞の中に水があり、その様子を見れる石は実際にあるが、中に魚は居ない。出所はあの有名な「耳袋」。またはそれ以前の「寓意艸」にも類話があるという。
■南條竹則『魚石譚』より
あれは『魚石』という珍宝だ。石を磨いて薄くすれば、透けて中の魚を見ることができる。この魚の遊ぶさまをみていると、心ゆるやかになり、長生きができる・・・。
■江戸時代の奇談集『耳袋』
江戸時代の『耳袋』という奇談集をご存じですか? 最近『新耳袋』という、幽霊談や不思議な話を集めた本がベストセラーになっていますが、その元となった本です。この中に『玉石のこと』という、魚石のお話が載っています。
・・・魚石のおはなし・・・
昔々、ある長崎の商人の家の礎石からこんこんと水がしみ出してきた。それを見た唐人が、ぜひ譲って欲しいと熱心に主人に頼んだ。主人はきっと何か価値があるのだろうと、唐人に譲るのを惜しんだ。主人はその石を取り出して磨いてみたが、うっかり石を割ってしまった。石からは水と小さな魚が流れ出たが、魚はすぐに死んでしまった。それを聞いた唐人はひどく悔しがった。「なんともったいない。石の中には魚がいて、石を割らないように透けるまで磨き上げれば、千金の宝になったろうに」