ぎょ(309) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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魚影(1)


■正岡子規 水底に魚の影さす春日かな

この俳句に刺激されて・・・少年時代の「金魚すくい」の情景がよみがえってきた。


ぎょえい1

夏の昼下がり、まぶしい陽を受けて、水槽の底に金魚たちがくっきりと影をおとす。そっと「ポイ」を金魚と影の隙間に差し入れて、金魚をすくいあげる。太陽に「ポイ」をかざし、やわらかな光線を顔いっぱいにあびる。少年の頃の時間は、ゆっくりゆったりと流れる。


ぎょえい2

黒出目金の影は一段と美しく、やわらかな尾ひれが爽やかな風を舞い上げる。


ぎょえい3

夜は、裸電球が金魚を演出し、ひんやりとした影が夏の夜の夢となる。


ぎょえい4

ビニール袋に入れて持ち帰った金魚を、「金ダライ」に放してやる。その影は物悲しい。


ぎょえい5


■魚影の群れ(1983)

厳しい北の海で小型船を操り、孤独で苛酷なマグロの一本釣りに生命を賭ける海の男達と、寡黙であるが情熱的な女達の世界を描く。吉村昭原作の同名小説の映画化で、脚本は、「セーラー服と機関銃」の田中陽造、監督は「ションベン・ライダー」の相米慎二、撮影は「ふしぎな國・日本」の長沼六男がそれぞれ担当。


ぎょえい6

小浜房次郎は、娘トキ子が結婚したいという、町で喫茶店をやっている青年・依田俊一に会った。彼は養子に来て漁師になっても良いと言う。マグロ漁に命賭けで取り組んできた房次郎は、簡単に漁師になると言われて無性に腹だたしく感じた。店をたたみ大間に引越してきた俊一は、毎朝、房次郎の持ち船(第三登喜丸)の前で待ち受け、マグロ漁を教えて欲しいと頼む。十日以上も俊一を無視し続けた房次郎が、一緒に船に乗り込むのを許したのはエイスケの忠告に従ったからだった。エイスケに指摘されたとおり、房次郎はトキ子が、家出した妻アヤのように自分を捨てて出て行くのではないかとおびえていた。数日間不漁の日が続き、連日船酔いと戦っていた俊一がようやくそれに打ち勝ったある日、遂にマグロの群れにぶつかった。そして、餌がほうりこまれた瞬間、絶叫がおきた。マグロが食いつき凄い勢いで引張られる釣糸が俊一の頭に巻きついたのである。またたく間に血だらけになり俊一は助けを求めるが、房次郎はマグロとの死闘に夢中だ。一時間後、マグロをようやく仕留めた房次郎の見たのは俊一の憎悪の目だった。数ヵ月後に退院した俊一はトキ子と一緒に町を出ていった。一年後、北海道の伊布港に上陸した房次郎は二十年振りにアヤに再会する。壊しさと二十年の歳月が二人のわだかまりを溶かすが、アヤを迎えに来たヒモの新一にからまれた房次郎は、徹底的に痛めつけ、とめに入ったアヤまで殴りつけた・・・


ぎょえい7


■田中光二「大いなる魚影」徳間文庫

英米ミステリーの翻訳家・立川尚介は、銀婚旅行でインド洋の楽園モーリシャスを訪れた。スポーツ・フィッシングの王者といわれるマーリン(カジキマグロ)釣りに挑み、男としての生の衝動をとりもどすのが目的だ。が、2日間何の手ごたえも得られない立川を冷やかに見下し、テニスやゴルフに興じる妻・操との絆は次第に薄れていった。翌日、立川は再び海に出た・・・


ぎょえい8


■高屋窓秋


雪青菜月光魚影秘花無明


白鳥は悲しからんに黒鳥も

ちるさくら海あをければ海へちる

頭の中で白い夏野となつてゐる


ぎょえい9