魚の文学散歩(うぉーきんぐ)[17]
■「私の釣魚大全」開高 健
これまでの釣魚随筆の枠をはるかに超えた、無類の愉しさ。卓抜な文明批判と自然観。釣魚をめぐる独自の思索を展げる名エッセイ。開高健の釣り人としての成長の記録をたどる一冊。開高氏が釣りを始めた頃の文章や、井伏鱒二との釣行も取り上げられており、興味が尽きない。タナゴやトラウトを狙う姿は身近な釣り師そのもの。諏訪湖でワカサギを、瀬戸内でタイを、根釧原野でイトウを、バイエルンの湖でカワカマスを釣り上げる。釣行記中には、「釣魚大全」のアイザック・ウォルトン、井伏鱒二、遠藤周作、野坂昭如・・・いろんな人たちが出てくる。味覚の表現も秀逸。
・・・できたてのホヤホヤを大皿にのせ、ショウガ醤油をそえて、だされる。背ビレ、胸ビレ、腹ビレをとってから、しっぽのほうに箸を入れてグイと起すと、ウロコが一枚の鎧となってガバッと、とれる、もう一つグイと起すと、肉が一枚の鎧となって、これまたガバッと、とれる。それをショウガ醤油にちょっとつけて頬張ったら、ああ、コトバが白い肉といっしょにのどへすべってしまう・・・
■「釣魚大全」カグナー