ぎょ(274) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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魚の文学散歩(うぉーきんぐ)[8]


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■桂浜水族館

当館の歴史は古く、昭和6年に創立され、大戦中の一時期の閉鎖はあったものの、長期にわたって社会教育ならびに観光の施設として活動を続けています。昭和59年には黒潮博覧会の開催に合わせて移転新築になり、現在に至っています。


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高知の名勝「桂浜」公園の浜辺にあるローカル色豊かな水族館です。また古くから博物館としても、県市民から親しまれ、高知県及び桂浜観光のシンボル的な存在価値を保っております。


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■盛田勝寛

アシカ担当。見た目は怖い?けど生き物大好きなやさしいおぃちゃんです。小説も書く。「水族館(1994)」第13回潮賞受賞・「海辺の白日夢(1996)」


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■1998.7月FMシアター<NHK-FM>「水族館」

原作:盛田勝寛/出演:林泰文、中嶋朋子、原田大二郎、向井真理子ほか

[あらすじ]高知県の片田舎にある、小さな水族館。そこに大学をでたばかりの青年が押しかけ、就職し住みつくことになった。魚から物事を教わり、道楽で水族館経営をする館長に影響を受けながら、主人公が傷ついた恋愛を乗り越えていく青春純愛物語。


かつら5

■私は水族館に勤務して22年の飼育の職人である。安月給に耐えて修業したので、それなりに腕は良い。特にアシカの繁殖では全国屈指の成績の良さだ。ここ最近はペンギンの雛や保護されたフクロウの雛を育てる機会もあり、これも概ねうまくいったので、海産哺乳類だけではなく、鳥もいけるということだろう。好きな動物の世話で暮らしていけるのならば人生安泰といいたいところだが、これでサラリーマンは辛いのだ。新経営者になってからはイベント中心の経営内容で、オーナーから命じられる事は、イベントマスコットにできるように動物を調教せい、ということばかり。「育て上げる」、「飼い込む」を中心にやってきた私にとっては、いささかついていけない、というところだ。もちろん、経営者の考えは正しいとも思う。客が入らなければやっていけないのは当たり前のことだ。図に乗って職人根性でわがまま言っているのは私のほうかもしれない。要するに、サラリーマンは向いていないのだ。私はアマチュアの物書きとして、県内では細々と評価を得ているので、もし小説で天下を取ることができたら、「盛田小鳥店」を開き、近所のきれいな若奥さん相手に鳥を売りたいと思う。


かつら6

犬も猫も大好きなので、店舗の裏に広い土地を買い、野良犬、野良猫のためのシェルターを造って、小説で彼らを食わせていくのだ。高知県内の山小屋を買い、別荘にして、毎日アメゴ釣りに興じたいとも思う。私は必殺の朝型人間なので、原稿は午前中に書いてしまい、午後は釣りと昼寝と動物の世話で暮らしていくのだ。しかし、私のことをアウトドア好きの自然愛好家と思われたら困る。ヒゲをたくわえ、チェックのネルシャツにジーパンをはき、自分の釣ったアメゴをログハウスで焼きながらオンザロックでしみじみ飲むという人種では決してない。ヒゲも淡白な魚も山登りも大嫌いだ。純度100パーセントのコレステロールじゃないとうまいとは思わない。私は動物と釣りが好きなだけだ。思う存分、動物と暮らしたい。ただそれだけなのである。そして不幸な野良犬、野良猫を少しでも減らしたいと考えるのは、フザケた私の最後の良心だろうか。それがかない、寿司とステーキを1日おきに食うことができれば、糖尿病で2年後に死んでもよい。(2006.6.9)


かつら7