魚の文学散歩(うぉーきんぐ)[2]
■柳美里 神奈川県横浜市鶴見区出身の在日韓国人の劇作家、小説家である。国籍は韓国。横浜共立学園高校中途退学。現在は神奈川県鎌倉市在住。東京キッドブラザースに入団。後に演劇集団青春五月党を旗揚げ。1986年、『水の中の友へ』で劇作家としてデビューした。
■「石に泳ぐ魚」柳美里
わたしたちは石の海に放たれた魚。魂の血を流しながら、泳ぎ続ける。困難な生をどう生き抜くかというテーマに、柳氏が正面から取り組んだ一作。柳氏のその後の作品への萌芽が随所に垣間見える。94年『新潮』に発表されたが、裁判により出版差し止めとなった作品。
■「石に泳ぐ魚」訴訟
柳美里氏のデビュー作『石に泳ぐ魚』で副主人公のモデルとなった顔に障害をもつ友人の女性が、無断で小説のモデルとされ、プライバシーや名誉を傷つけられたとして訴えた訴訟。原告側は、モデルに事前に許可をとって、あるいは徹底的に話し合って書くべきだと主張。一方で柳氏側は、小説はあくまで「虚構」であり、登場人物と現実の人間は異なると主張し、争ってきた。1、2審判決では、いずれも柳氏側の敗訴。柳氏と新潮社は上告していたが、本年9月24日の最高裁判決にて上告が棄却され、柳氏側敗訴の1、2審判決が確定した。判決では「(2審が)出版差し止めを命じたことは、表現の自由を保障した憲法に違反しない」とされている。小説の出版差し止めは、戦後初めてのこと。判決を受け、柳氏と新潮社は小説の改訂版を出版した。・・・だから、表紙デザインはあえて・・・なのかと納得。
■「魚が見た夢」 七歳の日記の中で、私は何人もの先生や同級生を殺しました…。家庭は壊れていた。自殺未遂を繰り返した。愛に何度も裏切られた。魂のひび割れを言葉で埋めるしかなかった少女が作家となり、時に極限の絶望を味わい、それでも書き続けた。デビュー以来の随筆作品をコレクションし、今一番輝く作家のすべてを明かす。生々しいまでに己の魂をさらけ出すドラマチック・エッセイ集。
■「魚の祭」 過去の糸のもつれからほどけて聴こえてくる、ある不幸な家族の影と悲しみの声を、錬金術師のようにたくみな言葉と情景とでたぐりよせる。1993年第37回岸田国士戯曲賞受賞。