深海(1)
地球の7割を占める海。しかも、平均水深は3,800mと深い。この海の中はいったいどうなっているのだろう。有人の潜水調査船としては世界で最も深く、6,500mまで潜ることができるのが"しんかい6500"です。
■海洋深層水とは、深海すなわち陸棚外縁部より深いところ、およそ水深200~300メートル以深にある海水のことです。海洋深層水の代表格は、北大西洋のグリーンランド沖合で冷やされた海水が深層へ潜り込み、南極を回って北上するものが有名です。太平洋で表層へ出た流れが、インド洋、大西洋へと流れていき、北大西洋にもどってまた潜り込む、という大循環が海洋では起きているといわれています。海洋深層水の水温は季節を通じて年中ほぼ一定です。表層水の水温は約16℃~28℃ですが、深層水の取水深度(374メートル:アクアファーム)の水温は約9℃、汲み上げてくる間に暖められ、陸上では10℃から12℃程度になります。こうした特性は、熱エネルギーとしての活用の可能性があり、古くから海洋深層水の利活用に取り組んでいるハワイでは、発電に生かす研究なども行われてきました。また低い水温は、比較的暖かい地域でも、キンメダイやサンゴといった深海性の生物や、低水温を好むヒラメなどの育成を可能にしました。こうした低温安定性を生かした漁業利用や、熱エネルギーを利用したシステム開発の研究なども各地で進められています。
海洋深層水は「無機栄養塩」に富み、海の生き物の源となる植物プランクトン(おもに、葉緑素を持つ微小の単細胞植物である珪藻)の栄養源となる「チッ素」「リン」「ケイ酸」が豊富です。海洋深層水には、表層水の約5~10倍の無機栄養塩類が含まれています。
海の生産力の源になっている基礎生産者は、植物プランクトンや海藻ですが、海中深くでは、浮遊することができる植物プランクトンが唯一の基礎生産者になります。海中では植物プランクトンがチッ素、リン、ケイ酸などの栄養素をせっせと消費して生息しています。そして、この植物プランクトンをエサにする様々な動物プランクトンが集まり、またこれをエサにする小魚、さらに大型の魚が集まってくるという食物連鎖がおきています。ところがこの植物プランクトンは、海面に届く光量の1%以上の光がないと生活できません。(光合成ができない)これがほぼ水深100メートルあたりまでとされています。外洋の澄んだ海でも水深150メートル以下では光量は1%以下といわれています。これ以上の深さでは植物プランクトンは光合成ができない休眠状態となりますから、栄養素は植物プランクトンによって消費されずに下の深い層へと沈んで蓄積します。この深い層の海水、つまり海洋深層水はこれらの栄養素の貯蔵庫の役割を担っているのです。さらに、清浄性-「きれいさ」を表すには「物理的清浄性」、「生物学的清浄性」、「化学的清浄性」がありますが、海洋深層水はいずれの清浄性にも優れています。