さて「ブリキ」と同じように銀色に輝く心惹き付けられるものが、現代社会にも存在します。それは「CD-ROM」です。科学技術の進歩したコンピュータ時代にふさわしい一品です。しかし、環境問題が騒がれる中、プラスチックは肩身狭い思いをしているのではないでしょうか。一番生活に多く使われているから、かえってバッシングも強いのかもしれません。図工美術界においても、素材としてプラスチックは敬遠されます。だからこそチャレンジするのが図工美術ではないでしょうか???
CD話(1)
「すくらんぶる」展に先立って、図工美術の教師仲間と教材の共同開発に取り組んでいました。偶然、賞味期限の切れたCD-ROMが多く入手できることを知り、「CD-ARTS」なる教材を開発することになりました。その頃は、インターネットへの接続を電話回線を用いてダイアルアップでプロバイダーに登録する方法がとられており、素人には面倒でしたから、接続用のCD-ROMが家電量販店の店頭に無料で置かれていました。プロバイダーは顧客獲得のため大量のCDをばらまいたわけです。当然、不要となったCDがゴミとなるわけです。使用済みCDもゴミになります。まさしく新しい環境問題の勃発です。
そのCDを教材の素材とできないものか?しかし仲間の反応は・・・かえって環境にやさしくないのでは?とか、接着や加工が容易ではないのでは?とか、CDそのものが小さいので作品には向かないのでは?とか、否定的でありました。だからと言って、現在低調な図工美術教育、そして教師の意識を高めるためには既存の研究ではダメだとの思いから、必死に研究を積み重ねました。多くの教師仲間の協力を得て、「CD-ARTS」の研究冊子を発行することができ、さらに「CD-ARTS」展を開催するに至ったのです。大阪はもとより他府県でも評判になり、実技講習会も実施したほどです。
ところがですよ、「賞味期限の切れたCD-ROM」そのものが賞味期限が切れてしまったのです。ご承知のように、インターネット接続はダイヤルアップを必要としなくなったのです。便利になったわけです。だから接続用のCDは姿を消してしまったというわけです。ということで、素材としてのCDは入手できませんので、個人的に不要なCDでたまに工作する程度の状況となったわけです。それはそれで、時代の流れですから・・・しかしあの時期にしかできない教材開発に取り組めたことは、とても貴重な経験となり現在に至っています。その後、教え子たちとの「すくらんぶる」を開始したわけですが、「CD-ARTS」研究に打ち込んだ情熱は今も健在で、日々コツコツと制作を継続・持続しているわけです。
さて、話がつい長くなってしまいましたが、そのような大きな影響を残してくれた「CD-ARTS」を紹介したいと思います。
どこが「魚」に関係あるねん?と思わずに、もうしばらくお付き合いください。
CDフラワーです。はじめからこれを制作できたわけではありません。当初は丸いCDのまま試行錯誤を繰り返していました。コラージュ程度のことです。そのうち、プラスチック加工は熱が有効であることに気付き、ハンダごてで表面に描いたり、アクリル工芸のヒーターで曲げたりしていました。しかし、大胆に変形させたいと思い、次にホットプレートを使用しました。グニャグニャになったり表面が泡立ったりと・・・これは研究の値打ちがあると思ったのです。そこで、とうとうガスコンロで火にあぶってみたのです。グニャグニャのCDを見て、これは花になると直感したわけです。「CD-ARTS」研究の前には、小学校からの依頼で「ペットボトル工作」を研究したこともありました。その時もペットボトルで花を作ったことがありましたので、その時の経験も役立っています。
しかし、ペットボトルの用にCDは簡単に切断できません。無理を承知で、ペットボトル工作で使用したリサイクルばさみで切断してみました。CDはバリバリと割れてしまいます。切り方をいろいろ工夫したり、違うハサミでやったり・・・ところが偶然うまく切れることがありました。様々なCDを試みた結果、ハサミが問題なのではなくCDそのものの材質?によるものだということがわかりました。その情報は美術教師仲間に配信され、協力を得て、ハサミで切断できるCDを特定していったわけです。それからというもの、ハサミで切ることができるわけですから、研究は飛躍的に前進したことは言うまでもありません。
その象徴的な作品が「CDフラワー」でもあるわけです。
変形・加工は熱とハサミですが、着色をどうするか?塗料スプレーはもとより、アクリル絵具も試してみました。
さらに、各種シールや粘着シート、マジックでストライプも入れてみました。ストライプを入れると「金色」に見えることも発見しました。
そして、究極の「CDフラワー」を完成させたのです。どうですか、この美しさ。研究を進めるうちに銀色の美しさから、さらに透明のCDを使いたいという思いがつのり、とうとうサンダーでCDを磨くという行為に至ったのです。透明になるはずがありません。CDはキズだらけです。しかしそれが、スリガラスのような美しさなのです。早速、花にしてみました。とりあえず色をつけてみようと蛍光スプレーを噴きかけたわけです。ありゃありゃ透明になるではありませんか。それもそのはず、スリガラスでも濡れ雑巾でふくと透明になるのですから・・・塗料の場合はそのまま透明度を維持してくれるというわけです。
お気づきだと思いますが、葉の部分は「ペットボトル」です。この作品を生み出したことが「CD-ARTS」展を開催しようという自信にもなった、記念碑的作品です。
さて、次回はお待ちかね「CDフィッシュ」の登場です。お楽しみに。