青の伝説(45) | すくらんぶるアートヴィレッジ

すくらんぶるアートヴィレッジ

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

昔の日本人は色彩をどう見たか。最古の文献でも千三百年ぐらい前にしか遡れませんが、万葉集で「あお」を表す漢字は六種類ある。蒼、藍、縹:これは「はなだ」と読みます。藍色の薄いブルーのことです。翠、碧、青:現代の萌黄色である。一方、万葉集に色彩をしめす「緑」の字が使われている歌は、四千五百十六首中わずか二首しかない。その緑は現代で言えば黄緑色をさしていたらしい。「あお」という漢字がたくさん見られ、それぞれ違った青~緑色を指している。したがって「あお」は総称語と考えられる。これに対して「緑」は総称語ではなく、純粋の色彩語で用例が極度に限られている。したがって「あお」という言葉の過去に遡る必要があります。「あお」は古代「あを」と発音されていたと思われるので、以下「あを」と書きます。同一または類似音の単語に複数の意味(これを同音衝突と言います)があったり、漢字の音訓の区別があることは外国人の日本語理解を著しく妨害する。留学生諸君はこれらに悩まされています。日本人はそれを駄洒落に応用する。駄洒落が最も作りやすい言語は日本語です。世界のどの言語でも同音衝突によって衝突した一方の単語は淘汰され消失するのが普通です。しかし日本語では消失しない。これは音声だけでは日本語の文意が決定されないことを示します。この点日本語は世界の言語の中で特異な言語です。どんな言語でも音声だけで表現される時代の方が音と表記の並立時代よりもはるかに長い。欧米の言語学者は「言語の主要素は音表現にあり、表記は付け足し」と思っています。日本語は言語の主要素が音素ではない例外的言語です。日本語は何によって文意を確定するのか。文の表記法、日本語では漢字の「意味」で確定するしかない。日本語で会話するときは頭の中に漢字あるいはそれに代る字形を思い浮かべなければなりません日本語は視覚に依存する言語です。漢字は中国語からの借用である。それゆえ現代日本語につながる日本語の歴史は中国語より浅いことが推察される。世界のどの言語でも文字表記を持ったのは最近のことです。中には文字表記法に未だ達していない言語もあります。日本人が漢字表記から離れ音声表記のみのカタカナ、ローマ字に移行すると、現代日本語は退化し、深い意味を持った文章は成立しなくなるでしょう。そして異なる言語構造の再構築された新日本語が成立し、新しい日本の文化を担っていくのでしょうが、ただし、そのときは日本語の音を子音、母音とも大幅に増やさないと同音衝突の問題で単語数が限られ、現代社会の維持、発展を担える言語にはなれないでしょう。ベトナムはもう漢字を使いません。中国系のレストランでは漢字が残っていますが、いま漢字を使うと知識を鼻にかけていると思われます。過去の漢字文化と断絶した彼等はこれからどういう文学を作っていくのでしょうか興味あるところです。⇒つづく