螺旋物語(78) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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今回の番組の主役は「マグダラのマリア」だったような気がする。
《母・カテリーナ》
レオナルドが生涯共に過ごすことができなかった生みの母。膨大な彼の手記・手稿の中で唯一登場する女性の名が母・カテリーナ。40年後「1493年7月16日 カテリーナ来る」の記述のみである。当時ミラノに住んでいたレオナルド(41歳頃)のもとを訪れ、病気で死亡したとされている。
「母ははじめ子宮のなかに人間の形態を形成し、しかるべきときになると、それは宿るべき魂を目指す。その魂はそれまでは母の魂に護られて眠っている」この彼の記述中に、自分の魂が父とは無関係に母親によってのみ与えられたという気持ちが隠されているようにも思われる。
《ジョコンダ》
当時は依頼を受けて制作することが芸術家の生活であった。モナリザのモデルは様々な議論もあるが、「ジョコンダ」とも呼ばれることから当然モデルは存在したと考えられる。今回登場したもう一枚のモナリザは、ルーブルの作品よりも若々しく「眉毛」「唇」「背景」そして「未完成」であり、また多くの文献やラファエロの模写(素描)とも整合性があり、「ジョコンダ」と呼ばれるモナリザのようである。
《モナリザ》
となると、レオナルドが生涯手放さなかったモナリザとは???という疑問が生じるのである。まさしく「謎の微笑」というところか。
1.「眉毛」がなく「唇」に赤みがない。
2.年齢は中年から熟年。
3.「背景」の違いと「柱」の痕跡が少しだけ見られること。
《妊娠説》
番組では「左目横」の膨らみや「手」の位置から「妊娠」を示唆するものとしている。米粒よりやや大きな腫瘤について、「芸術新潮」(1999年9月号)で、医師で作家の篠田達明氏は「画面の中のモナ・リザは生活習慣病である高脂血症を患っていた可能性が十分ある」としている。コレストロールの多い食物を長年摂り続けると、アキレス腱が太くなり、皮膚にもコレストロ-ルがこびりつき、黄色いしこりが肌の各所で盛り上がり、肘やまぶたがその好発部位だ、と篠田氏は述べている。科学者の目で、すべてを見逃さずに描いたレオナルドだから、当然何らかの意味がここにも存在するに違いない。ただ「妊娠」を云々できる確証とはならない。
《マグダラのマリア》
そこで視点は違う角度へと進む。すなわち描かれていないものを探るのである。当時の肖像画には、そのモデルの地位や立場を象徴するべく「装飾品」や「宝石類」「衣服」が必ず描かれるという。しかしモナリザにはそれらは見られない。そして「長い髪」「胸元」の特徴を、他の様々な画家たちの作品と比較して浮かび上がった「モデル」がマグダラのマリアであった。紹介した画像は、左からティツィアーノ、ジョルジュ・ド・ラトゥール、カラヴァッジョによって描かれた「悔悛するマグダラのマリア」である。