螺旋物語(68) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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《スクリューパイル》
横浜・山下公園に程近い「大さん橋国際客船ターミナル」は、1894(明治27)年の建設以来一世紀以上の長い間、横浜の歴史を見守り続けてきた。しかし、老朽化のため再整備が必要となり、昭和63年度から「さん橋」部分の工事に着手、平成12年からは、新しい客船ターミナル部分の整備を進め、昨年6月1日に先端部の屋上広場と大さん橋ホールを除いた施設の大部分が供用を開始した。9月20日からは24時間オープンの屋上広場も供用が始められている。地下1階地上2階建、最高高さ15m、建物の長さ約430m、幅約70m、7万tクラスの旅客船が同時に2隻接岸可能な国内最大級の客船ターミナルだ。ターミナルの本体は、山下公園側からの眺望や見通しを妨げない高さに抑えられ、接岸した船を引き立てる景観に配慮して設計された。屋根面は板材を敷き詰めた緩やかな曲面から構成され、建物には階段がなく、スロープやエレベーターによって各階を昇降できる完全なバリアフリー対応だ。出入国する船客の通関検査、パスポートやビザの審査、伝染病や動植物の検査など大型客船の入出港を目的とした施設だが、横浜の新しいスポットとしても人気を集め、多くの人が散策に訪れている。
現在の大桟橋の前身である鉄桟橋は、海底にねじり込まれた約500本の鉄管の杭に支えられていた。鉄管はイギリス製で先端には螺旋状のシューが取り付けられており、その形状からスクリューパイルと呼ばれた。直径約32cm、肉厚約3cm、長さ約16~20mのスクリューパイルを地盤にねじ込むようにして打設したという。大型客船が接岸する際に、桟橋には10万tを超える海水が押し寄せるという計算もあるが、この鉄杭は約100年もの長きにわたって膨大な水圧に耐えてきたことになる。今回の再整備事業で掘り出されたスクリューパイルは「みなとみらい21」の日本丸パークに展示され、明治期の高度な港湾土木技術を今に伝えている。