《鬱金(ウコン)Turmeric》【学名】Curcuma domestica VALETON【異名】Curcuma longa L.【分類】ショウガ科ウコン属の多年草木【名称】(日本語)ウコン、ターメリック、キゾメグサ[沖縄]ウッチン、ウッキン、ウキャン(朝鮮語)ulgun(中国語)姜黄[jiang huang]、郁金[yu jin]。南アジア原産ですが、現在に主産地はインド。健胃の効果がある他、古くには五香の一つとして香りの分野でも重要でした。しかし、今では香料としてはほとんど使われず、染料としてや、カレー粉の原料として知られています。鬱金には防虫・防菌・防湿効果があり、古くから書物や美術品を保管する金色の布として使われてきました。根茎は、古くから香辛料として使われたほか、薬、染料、化粧品などにも利用される。カレーの色は、ほとんどがウコンによるものですが、魚のスープや鶏料理とも相性が良く、インド料理には欠かすことのできない香辛料である。またヒンドゥー教では、ウコン自体が神聖なものとされ、結婚式や儀式にさまざまな形で用いられる。以前は、天然痘などの予防のためにウコンとインドセンダンの葉をすり潰したものを子供の体に塗ったという。今は、インドでも天然痘は過去のものとなり、地方でもそういうことはなくなったらしい。美容のためというより、薬用のためにウコンを顔に薄く塗ることもある。インドでは、絨緞、紙、玩具、菓子類、皮革、ヤシの繊維、綿布、絹などの染料に利用するが、ウコンだけでは定着性がなく、すぐに色あせて薄くなるので、他の染料の補助とされることが多いという。日本では、沢庵を黄色く染めるために、かつては本州でも盛んに栽培されていたという。現在でも、伝統的な沢庵の染料にはウコンが使われている。沖縄ではウッチンと呼び、根茎を煎じたものを肝臓の薬としている。身近なところでは、チューブに入ったマスタード(洋芥子)の黄色もウコンで、ウスターソースにもウコンがはいっている。タイでは、香辛料や食品の染色料として使うのはもちろん、雨季の初め、若芽と花序を採集して、野菜として茹でて食べる。またタイではウコンに他の植物を混ぜることにより、異なった色を作っている。ライムを混ぜると赤色に、アカシアの葉を混ぜると緑色に、ザクロの皮を混ぜると赤褐色になるという具合である。インドネシアのバリ島では、ナシ・クニン(黄色いご飯)の材料として、生の根茎が使われる。ナシ・クニンはヒンドゥー教徒が家庭で作る、ヒンドゥー教の行事の日の特別なご飯で、街の食堂にはない。《効果と効能》薬用としては、アジアの各地で幅広く利用されている。止血、強壮、風邪、打撲傷、下痢、黄疸、肝臓疾患、間欠熱、糖尿病、潰瘍、皮膚病、寄生虫駆除など、さまざまな症状に効くという。止血には、ウコンの粉末を水で練って塗ると良い。しかし、少ししみる。風邪薬は牛乳を沸騰させ、そこにウコンと砂糖を加えて作る。ウコンとミョウバンを混ぜて作った軟膏は、打撲傷などの外用薬として使う。寄生虫駆除には新鮮な汁を使い、その他の疾患には粉末や煎じ液を飲用する。その他、ウコンには抗菌・防虫の効果がある。科学染料と違い、ウコンで染めた布は、バイ菌や虫を寄せつけない。ウコンのオレンジがかった黄色は、アルカリ物質によって赤色に変化する。これを利用したのが、タイのライムを混ぜた染色。ウコンの溶液に洗剤を加えた時赤色に変化したら、その洗剤はアルカリ性だと判る。漢方では、血を整えて、新陳代謝を促進する薬として、血行不順や胸腹の痛みに使用されている。肝臓の解毒機能を高めるほかに、胆汁の分泌を促進したり、胃腸の働きを整える作用があるので、疲労・胃炎や胃酸過多・肝臓の不調・打撲などにも用いられる。ウコンに含まれるクルクミンや精油などの有効成分には、胃液分泌亢進・血液凝固防止・鎮痛鎮静・コレステロール値の抑制・ガン抑制・抗酸化・アルツハイマー予防などの幅広い効能があることがわかっています。日本では特に沖縄で馴染みが深く、「ウッチン」と呼ばれるウコン茶がよく飲まれている。二日酔いを予防するために、お酒を飲む前後に飲用する。中国の古書に「ウコンは黄金色をなし、古人はこれを酒に入れて憂鬱な気分を治したため、この名がある」と記されているように、薬酒と相性が良いことが古くから知られています。「ウコンの薬効」の著者で近畿大学東洋医学研究所、今西博士や、三沢ウコン研究所の三沢先生は、次のような効能を持つと述べられています。肝臓病・糖尿病・高血圧・低血圧・心臓病・狭心症・C、E型肝炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・黄疸・助膜・顔のむくみ・リュウマチ・痔・子宮出血・利尿・健胃・痛経・じんましん・胆石症・二日酔い・ぜんそく・眼底出血・眼瞼炎・難聴・耳鳴り・擦り傷・切り傷などに。《こぼれ話》スパイスとしてカレー作りになくてはならない存在で、その明るい黄色とスパイシーな風味がインドや東南アジアでは人々の暮らしに根付いている。日本ではたくあんの色づけにも使用している。インドネシアの結婚式では、新郎新婦がウコンをすったものを体に塗る風習があり、「浄化」を意味する化粧品としても使われている。南インドでは、ウコンで顔をうっすらと黄色く染めた婦人をみかける。ウコンには防虫・抗菌の効果もあり、ウコン染めの風呂敷で大切な衣類や書画骨董などを包んでおくと、虫がつきにくくなる。また、ウコンには邪悪なものを避ける力があると信じられてきました。タイではお坊さんがウコン染めの外衣をまとっている。ウコンはインド伝統医学のアーユルヴェーダで、黄疸の特効薬とされている。クルクマ、インド・サフランなどとも呼ばれている。ウコン・鬱金のウはウッ、しげる。気の充満を意味し、むんむんとするほど木が茂ることから、はけ口がなく悶々とする意味となった。つまり、気がふさぐ、とどこおるということに使う。金は、黄金色、黄色のことである。したがって、葉っぱが青々と茂り、根が黄金色に由来するのか、根茎を生のまま食べると、とどこおった血を清める薬効によるもの。この鬱金という字は、金を閉じ込めるという意味の文字のせいか、財布や焼き物の包みの布の色などに使われ、江戸時代には特に広く愛用された。英語のターメリックはラテン語のテラ・メリタ「素晴らしい大地」から生まれたとされている。フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデンなどでは、ラテン語のクルクマすなわちクロッカス「サフラン」を表すサンスリット語のクンクマに由来しているクルクマ関連の名がついている。ウコンについての各国の言葉と由来、それと民族、ウコンの伝播の歴史を語るだけできりがないほどの資料となる。ウコンの近縁として、キョウオウ「ハルウコン」、ガジュツ、テムラワク、クズウコン、ゲットウ、タケクマラン、サンナ、カルダモンなどなど。《多様な利用法》ウコンの鮮やかな黄色は、ウコンの主成分クルクミンであり、カレー料理の食欲を引き立ててくれる。魚、牛肉、鶏肉の油を使ったフライや炒め物にもよく合う。ソース、マスタード、チリパウダー、フレンチドレッシング、シチュー、スープなど幅広く用いられる。チーズ、バター、湯葉、たくあん漬けの着色にも用いられる。加工食品には、ウコンから抽出したクルクミン製剤が用いられ、特にウインナーソーセージの羊腸の外染めに効果がある。クリやリンゴ等の果実類のシロップ漬けには、クルクミンの水溶液を加熱して、その中にあく抜きしたものを三十分浸漬して染色する。日光には強くないが、沖縄の紅型の黄色をはじめとして、木綿、絹、羊毛、皮革などを染色する。ウコン木綿は、防虫効果があるというので、和服を包むのにもちいられている。よく見かける黄色い風呂敷きは呉服関連の業者の方にとっては定番とも言える風呂敷きで、昔から使われています。呉服屋さんの店内が樟脳臭くないのも、実はこの風呂敷きのおかげ。染料として使用される鬱金(うこん)に防虫効果があるから。畳紙は、「たとう」、「たとうし」とも呼ばれます。着物や袴、長襦袢などを包んで保管しておく紙です。普通、丈夫で通気性にすぐれた、厚手の和紙でできています。中には鬱金染めによる防虫加工が施されたものもある。また、中に入っている薄い紙も着物を保護するために必要なものですから捨ててはいけない。沖縄では琉球王朝時代には王朝の専売品とされ、民間栽培は許されなかった程の貴重品でしたが、最近ではウコンの主要色素でジアリールヘプタノイドの一種であるCurcuminのもつ機能性が世界的に多くの研究者から注目され、抗酸化性をはじめ肝保護作用、健胃作用、抗腫瘍作用、高脂血症抑制作用、強心作用、抗菌作用等の科学的解明が進められている。さらに、近年Curcuminを経口摂取すると腸管で吸収されるときに還元されtetrahydorcurcuminに変換されることが明らかにされ、tetrahydorcurcuminが生体内で大腸ガンや腎臓ガンの予防効果を発揮することが報告されている。また、沖縄産の春ウコンにはCurcuminの他、精油成分であるフラボノイド、カンファー、アズノン、シネオール等に多くの効能効果が期待されている。通常、「ウコン」といわれている物は大きく分けると「春ウコン」、「秋ウコン」及び「紫ウコン」の3種が有り、春ウコン(キョウオウ)薬用・・・花は春に咲く、包葉はピンク。秋ウコン(ウコン)料理用・・・花は秋に咲く、包葉は白。紫ウコン(ガジュツ)薬用・・・花は春に咲く、包葉はピンク。
防虫効果といえば、キハダもそうで、虫に喰われ易い和紙でできている写経紙を染めた。アイは、マムシ避けによいと言うことで、野良着にもちいられた。クリの汁は皮膚病に効果があり、平安時代下着類の染色に用いられた。アカネ汁も皮膚病や眼病に効果があるということで、下着を染めたり産湯布に用いた。