やっぱり映画のことも書いておかなければ・・・
《らせん》角川ホラー文庫 著:鈴木光司
幼い子供を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山竜司の解剖を担当した。冠動脈から正体不明の肉腫が発見され、遺体からはみ出た新聞紙に書かれた数字は、ある言葉を暗示していた。・・・「リング」とは?死因を追う安藤が、ついに到達する真理。それは人類進化への扉か、あるいは破滅への階段なのか。史上かつてないストーリーと圧倒的リアリティで、今世紀最高のカルトホラーとしてセンセーションを巻き起こしたベストセラー、待望の文庫化(「らせん」文庫本より)
そもそも、『らせん』は、『リング』の続編としては徹底的に型破りな構成を持つ。曲がりなりにもスーパーナチュラル・ホラーの枠組みにおさまっていた前作の物語に対して、『らせん』は冒頭から科学的な検証をほどこしてゆく。物語の主人公は監察医の安藤満夫。安藤が、学生時代の友人である高山隆司の死体を解剖する場面から、『らせん』は幕を開ける。前作の読者なら記憶しているとおり、高山隆司は『リング』の主要登場人物のひとり。おそらく『リング』に出てくる中で、もっとも印象的なキャラクターだろう。前作の主役級の人物の解剖からはじまる続編……。しかも、前作の主人公であり、オマジナイの謎を解いたはずの浅川の妻子が死亡している事実が明らかになる。『リング』のあの結末はいったいなんだったのか。思わず茫然とする。こうして、『らせん』の新しい登場人物の手で、『リング』は新たな角度から文字通り読み直されてゆく。
《らせん階段》1945年アメリカ
鬼才ロバート・シオドマク監督が、エセル・バリモアを主演に迎えて贈る心理サスペンスの傑作。町外れのある古い屋敷に、 一風変わった人々が暮らしていた。寝たきりの女主人、彼女を世話をするしゃべれない娘・ヘレン、アル中の女中、 教授とその秘書。その頃町では、障害を持つ女性ばかりを狙った殺人事件が発生していた。そして土砂降りの雨の夜、ついにヘレンの身にも魔の手が忍び寄る…。
リメイク1975年。45年のロバート・シオドマク監督作品の再映画化。製作総指揮はジョセフ・シャフテル、製作はピーター・ショウ、監督は「国際殺人局K・ナンバーのない男」のピーター・コリンソン、原作はエセル・リナ・ホワイト、脚本はアンドリュー・メルデス、撮影はケン・ホッジス、音楽はフィリップ・マーテル、編集はレイモンド・ポールトンが各々担当。出演はジャクリーン・ビセット、クリストファー・プラマー、ジョン・フィリップ・ロー、サム・ワナメイカー、ミルドレッド・ダンノック、ゲイル・ハニカット、エレーン・ストリッチなど。日本語版監修は高瀬鎮夫。テクニカラー、ビスタサイズ。前作はモノクロだっただけに薄暗い感じも相まって恐怖心を煽られたが、この作品は映像よりも話の展開が堪能できる。さすがに「密室」を作ったピーター・コリンソン監督だけあって、追い詰められる人妻の恐怖は迫力たっぷり。濡れたような瞳のJ・ビセットがとても美しく素晴らしい。