いつ出てくるかなあと思っておられた方も多いかもしれませんね、DNAの二重螺旋の話。ワトソン・クリックのDNAの構造発見から50年、正しくは2004年ですが・・・
「われわれは、デオキシリボ核酸(DNA)の塩の構造を提案したいと思う。この構造は、生物学的にみてすこぶる興味をそそる斬新な特質をそなえている」
これは、ワトソンとクリックが連名で『ネイチャア』誌(1953年4月号)に提出したわずか900語の論文の書き出しです。ケンブリッジ大学のキャベンディッシュ研究所で、DNAの立体構造の解明に取り組んでいた2人は、DNAが逆方向に走る2本の分子鎖からなる二重螺旋構造であることを発見しました。二重螺旋構造によって、古くからの生物学上の謎・・・遺伝情報がいかに蓄えられ、いかに複製されるか・・・は見事に解明されたのです。アデニンとチミン、グアニンとシトシンというペアでペアで連結された2本のねじれ合った鎖、この塩基の配列がお互いに相補関係にあること。だから、1本の鎖の塩基の並び方が決まれば、その相手は自動的に決まってしまう。1本の鎖が、それと相補的な塩基配列をもつ鎖の合成鋳型になるのです。
ワトソンは、野心満々の若い生物学者でした。ナポリの学会で発表されたDNAのX線回折像が忘れられませんでした。DNAの構造がわかれば、遺伝子の働きの理解も大きく前進する。遺伝子とは規則正しい構造をもち、正攻法で解決できる。ワトソンはDNAの構造を第一番に発見しようと決心しました。「ある考えを危険をおかして実行してみようともしない、鳴かず飛ばずの大学教授におさまることより、有名になった自分の姿を想像してみるほうが楽しいに決まっている」と。このとき、DNAの構造解析の有効な手段であるX線回折像の解読法については、まったく無知でした。フランシスは、他人の仕事の真の意味をつかみ、それを筋の通った形にまとめる力を持っていました。物理学を離れて、生物学に関心をもつようになったのは、有名な理論物理学者シュレジンガーが著した『生命とは何か』を読んだからだといいます。DNAの構造解明では、ノーベル化学賞のポーリングが遂にDNA構造をつかんだという、ニュースもありました。結局、これはポーリングの大失敗であったのですが。ワトソン達に与えられた余裕はせいぜい6週間。とにかくノーベル賞は、まだポーリングの手に渡ってはいませんでした。ワトソンは、2本鎖で模型を組み立てて紙の環をグルグルと描いているに、アデニンとチミン、グアニンとシトシンという単純な組み合わせでうまくいくことに気がつきました。DNAは、A-TとG-Cというペアで連結された、2本の鎖からできている。クリックは、逆方向に走る2本の分子鎖からなる二重らせん構造が導かれることにすぐ気づきました。発見当時、ワトソンは25歳、クリックは37歳でした。
1953年にDNAの二重螺旋モデルを提唱した研究者の一人・フランシス・クリックがしたためたDNA二重螺旋のラフスケッチがインターネット上で無料公開されています。