
この本は、小学校5・6年生以上を対象とした児童書である。設計事務所勤めから絵本作家に転身した青山氏の絵は細部に正確でありながら、どこか親しみのある楽しい絵だ。それが各頁にあって、難しいまちづくりの話しをわかりやすくしてくれる。小学校5・6年生でこんな難しい言葉がわかるのかなあ、と思うところもあるが、話しの内容は、子供達の興味をベースに先生が実際のまちにでかけて、子供達にわかりやすく話しをするというもの。そこには、商店街のおやじさんや、自然保護にとりくみNPOの人、マンション建設に反対する住民などもでてくる。物語そのものは架空の話しである。特に「楽しいまちなみをつくる」では、市が募集した工場跡地への住宅団地建設のアイデア募集に大人達のアイデアを押しのけて、子供達の創ったプランが当選するというもので、本当にそんなことがあったらすごいのに、と思わせる内容だ。ただし、いずれの物語でも参考とされている事例があって、その内容をうまく盛り込んである。なんといっても、魅力的なのは、子供達の関心をどんどんひきあげてくれる先生だ。近年、まちづくりをテーマとした総合学習への取り組みが増えているが、大いに参考になるに違いない。さらに、その語り口や子供達のパワーの引き出し方は住民の方々と一緒にまちづくりをすすめる上で学びたいところだ。児童書といってあなどることなかれというところだろう。(解説より)
教育改革の中「学校・家庭・地域社会」の連携・協働が叫ばれて久しい。家庭や地域の教育力が低下したと言われる。「わがまちの誇れる学校づくり」という事業が大阪の学校で進められているが、「誇れるまちづくり」が保護者・地域住民によって進められてこそ、そのまちに生まれ育つ子どもたちの心が豊かになる。個人が個別となり孤立化する現代社会・地域において、誇りうる帰属意識の醸成を急がなければならない。