青の伝説(23) | すくらんぶるアートヴィレッジ

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虫糞

《虫のふんで染色》昆虫のふんを使って布を染めるユニークな研究に、伊丹市昆虫館副館長の後北峰之さん(45)=川西市萩原台西2=が成功した。チョウやナナフシ、カブトムシなど、さまざまな素材を使って、緑や茶色の色素を抽出。すでに京都の染色工芸家にも織物を発注しており、同館で始まる「むしのうんこ展」で一般公開する。同館の草木染教室で講師を務める後北さんが、年間1万匹以上飼育されているチョウの幼虫のふんを「何かに活用できないか」と考え、2000年12月から研究を始めた。作り方は、ふんを水で煮て作った染液で布を煮た後、酢酸などの媒染剤を入れた水で煮て色をなじませる。昆虫が食べる植物に含まれる色素を抽出する仕組みで、後北さんは、最初に煮る水をアルカリ性にした場合は緑系の色に、酸性の場合は茶色系に染まるのを突き止めた。初めて挑戦したジャコウアゲハから、茶色や緑色の抽出に成功したときは「こんなにきれいな色が出るとは」と驚いたという。これまでにチョウやカブトムシなど昆虫16種類のほか、スズメバチの巣などでも試行。成果はこのほど専門誌にも掲載された。現在は植物からは抽出されにくいという赤や紫に挑戦している。「虫によって食べる植物が違い、体の構造が違う。もっとさまざまな色が出るはず」と後北さん。「何を食べたらこんなきれいな色がでるのかな、といろいろな視点から昆虫に興味を持ってもらえれば」と話している。(神戸新聞より)

さて、青の染色に「虫」が関与しているという事実は残念ながら発見できない。しかし、なぜ仏典に「虫を用いた」とされたのか?単純な誤解から差別が生まれたと片付けられない。誤解にせよ何らかの原因があったと考えるべきであり、そのことをつきとめない限り今後もまた誤解・偏見から差別が生じる可能性がある。

(1)まず「虫」という概念についてであるが、現在私たちが考える以上に広い生き物を含んでいたと考えられる。「貝」についても「貝偏」ではなく「虫偏」の漢字が多いこと。「蛇」などをはじめ、うごめく(蠢)小動物・生命体のすべてが「蟲」「虫」とされていたに違いない。「まむし」は「蝮」と書くが「虫」である。

(2)言い伝えによると「藍染め」の衣服は「蝮」に噛まれないということである。ジーンズの「インディゴ染め」についても同様の話がある。しかし、その科学的根拠は見出せない。ただ「藍」の実や葉などは漢方薬として用いられてきたという事実は存在している。防虫効果があり、藍染め工房近辺に虫の死骸が多くあったため誤解されたかも?という気がして、実際に徳島県藍住町まで現地調査に出向いたがそのような痕跡や話は一つも採取できなかった。

(3)唯一、残された可能性は「臭い」に関することである。「藍染め」の行程では「発酵臭」がなんとも生臭いのである。「貝紫」や「コチニール」などの動物染料も同様であることから、藍=虫とされたかもしれない。しかし、「藍染め(青)」だけが差別の対象とされたとなると、この可能性も消えてしまう。

(4)そうなると、やはり「青」という色そのものから差別の根拠を探るしかないようである。「青」は「漠」とした広い範囲の色をさすというのが一般的な解説であるが、「青」と「漠」の音や形には、「明るい⇒赤い」「暗い⇒黒い」のような関連が乏しい。「漠」は「ひろい」と読む。「淡い⇒青い」なら納得できるのであるが・・・古代の色名としては「赤い(朱雀)・青い(青龍)・白い(白虎)・黒い(玄武)」として「○○い」となる色だというのは説得力がある。ただ「黄色」についてはどうなのか?「黄色い」?

(5)とにもかくにも、自然界に固有の「青色」をもつものは誠に希少であることに違いはない。「青」は「空」であり「海」である。固有色ではなく千変万化の色である。