とうとう螺旋物語も100回を迎えました。そこで、その原点ともいうべきお話をしたいと思います。今から40年ほど前、私が美術の道を歩む決定的な出来事がありました。中学校の美術部に籍を置く私は、高校受験の間際まで美術室に通い、ひたすら油絵に取り組んでいました。同級生たちはとっくに引退し、私だけが美術室にイーゼルを構えて筆をふるっていました。まだまだ写実的な表現が未熟な私は、教えられた単純化を武器に抽象的な絵画にのめりこんでいたのです。モチーフは「モナリザ」でした。題名は「のどぼとけのあるモナリザ」です。後々知ることになるのですが、レオナルドは男色家であったという噂もありますが、何か私はモナリザから感じていたのかもしれません。さて、概ね全体ができあがったのですが、どうしても顔の表現が浮かばず、ただ絵具を塗りたくっていました。誰もいない美術室なのですが、ふと気付くと後ろに先生が立っておられました。黒田幸雄先生です。とてもコワイ先生で知られていますが、私にはとても親切にしてくださいました。美術しかとりえのない私でしたから、本当にありがたかったです。静かに私の制作しているところをながめておられたのでしょう。そして、「ちょっとかわってごらん」とおっしゃって作品の前に座られ、ペインティングナイフで私がベタベタ塗りたくった顔に「L字」の筋を入れてくださいました。なんと、一瞬にしてモナリザの顔が現れたのです。そして先生は静かに「どうや?」と私に尋ねてくださいました。私は声も出ませんでした。「スゴイ」と正直感じました。以来、私はひたすら美術の道を歩み、美術のおかげで今日まで生かされてきました。私にとって「モナリザ」は美術の遺伝子でありDNAのようなものです。まだまだ私の螺旋物語は続きますが、ブログとしてはここで区切りにしたいと思います。ご愛読ありがとうございました。次はどんな内容の物語が始まるか?お楽しみに。