劇団た組「綿子はもつれる」@シアターイースト
[作、演出]加藤拓也
[出演]安達祐実、平原テツ、鈴木勝大、田村健太郎、秋元龍太朗、天野はな、佐藤ケイ
「もはやしずか」を見損ねたので張り切ってチケットをとったら上手の最前列だった。
その近さで、芝居を見たら、とても苦く、空気感になんとも複雑な気持ちになった。
今回は私にとってはそんな作品だった。
終演後、引きずっていて、キャストさんの顔をまともに見れなかったなあ。
ネタバレ感想です。
綿子を演じたのは安達祐実さん。綿子と周囲の人との会話劇。
綿子は再婚である悟(平原テツ)と結婚しているが、夫婦仲は冷えきっている。悟の連れ子である大翔(田村健太郎)と3人暮らし。綿子と大翔の関係もどこかぎこちない。
悟は前妻の由香と不倫していたようで、その事が夫婦仲にも影響を与えている。
綿子は木村(鈴木勝大)という若い男性と不倫している。
彼との楽しいホテルでの一時の場面から始まった。そしていつものように別れ、先にホテルを出た木村。そこに大きな音が響く。ホテルの部屋から外を見ると、木村が車の事故に。部屋から119番する綿子。彼は亡くなってしまった。
舞台は上手側の奥がカーテンで隔たれいて、そこに大きなベットが置かれている。そこでは、主に綿子と木村の出会いや、ホテルでのシーン等が描かれる。
下手から上手前方は家のリビング。
リビングでの出来事は時系列を追って、木村との出来事は逆に時間を遡っていき、最後に木村との最後の日のシーンにもどる。
カーテンが開いたり閉まって話が進むのが、話を分かりやすくするにも効果的。
その時な音が不思議なんだけど残る。
またカーテンを閉めた状態での影を使ってのシーンがあるのだが、一度見せたシーンを最後にカーテンの影を使って見せたのは心理的に、とても効果的だった。
破綻していた2人は、木村の事故後、この頃から関係を構築しようとする。
悟か働きかけ、その悟の働きかけに少しずつ綿子も関係を構築しようとするのだが、どうにも会話も、視線も、タイミングも、合わず。相手を受け入れようとする気持ちが伴わない会話の居心地の悪さったら。
唯一記念日にお互いサプライズのプレゼントを送り合い、楽しそうなひと時を過ごすのだが、綿子のちょっとした油断から、亡くなった木村との関係がばれてしまい、関係は修復不可能な状態になってしまう。
綿子の事を考えてでなく、自分の思いで動いているとしか思えない悟。珍しく作る夕飯も、旅行の提案も、関係を構築したいならという観点からしたらどこかずれている。気持ちが離れてしまっている2人で行った旅行の後の雰囲気の悪さ。安達さん、平原さん、お2人のリアルな演技が凄かった。
唯一2人が楽しそうに見えたシーンに、ゴムチューブ持たせ引っ張りあって楽しませるという演出。最初に悟が購入して届いた荷物なのだが、またどうしようもないものでも買って‥と言いたそうな、興味も持たずに「何買ったの?」と綿子が聞いた箱の中身。
置きっぱなしで初めてこの時に使われてたのだが、悟は引っ張り合っているゴムチューブをいつ綿子が離すかとここでもドキドキしていて、逆に綿子は無理にはしゃいでいるようで、この夫婦関係そのものを表しているようだった。
ちょっとした油断で悟に詰めよられ、その後、綿子は木村の関係を悟に話すこととなってしまう。その時の悟の態度、泣き続け過呼吸になる綿子。ここでの相手への対応も、正しい選択が出来ず、もつれにもつれてしまう。
この辺りは綿子の気持ちに苦しかったなあ。
過呼吸で泣き崩れる綿子、壊れてしまうんじゃないかと。
そもそもこの2人修復は難しいんじゃないかな?それでも一緒にいるとしたら、もつれが複雑でないうちに、もつれたままほっておいたらもう少し、いやなんとなくでももったのに‥なんて思ったりもした。
夫婦の話と並行して、中学生の大翔と友達との関係、恋も描かれていた。初めてのドキドキする恋。まさに中学生といったら、あんな感じだよなあ。そこを演じた方々も上手かった。
平原テツさん、安達祐実さん、天野華さんほんと良かった。