~少年と犬~ 震災の爪痕は人だけではなく犬にも残る。 | 人生の歴史を動かす運命思想家 檜原有輝ひばらゆーき

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図書館にて。

 

 

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"出会った時からそうだった。笑顔の素敵な優しくて頼もしいスポーツマン。物怖じすることなく、紗英をどんどんリードしてくれた。恋に落ち、プロポーズされ、結婚し、やがて、紗英は自分の浅はかさを思い知った。大貴はだれに対しても分け隔てなく優しい。妻であろうと友人であろうとただの顔見知りであろうと区別はしない。物怖じしないというのは物事を深く考えないというのと紙一重だった。大事な決断を下す時でさえ、大貴は深く考えず、その時の自分のフィーリングで物事を決めていく。相手を慮ってリードするのではなく、自分のやりたいことをやりたいようにやるために先頭に立ちたがる。大貴はそういう男だった。悪い人間だというのではない。ただ、夫に選ぶべき男ではなかった。"

 

”ラブホを出ると駐車場へ向かった。美羽が所属しているデートクラブはスタッフによる送迎はやっていなかった。美羽のようにクラブと契約している女は、スマホで教えられたラブホに自分で行き、金を受け取り、また自分で帰るのだ。自分の取り分を除いた金を後日、集金に来る男に渡す。時々金を持って逃げ出そうかと思うこともあるが、実際に金を持ちだした女の末路を聞くと、リスクを冒す価値がないことに気づく。”

 

”ホームセンターでナイフ、ロープ、ブルーシート、スコップを買った。別の店で超特大のスーツケースも手に入れた。具体的な計画があったわけではない。漫然と、自分がすべきと思うことをやっただけだ。”

 

”街にはまだ、燃えた木材の匂いが残っていた。あちこちに瓦礫が積まれ、陸に打ち上げられた漁船が道を塞いでいた。(中略)震災の時は同じように光を抱き、津波から逃れようと遮二無二、高台を目指して走ったのだ。(中略)海に近づくと波の音が聞こえてきた。木材の燃えた匂いが、潮の匂いにかき消されていく。”

 

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東日本大震災の後に迷い犬となった「多聞」が、出会った人ごとに関わりが出来ていくドラマが綴られています。ずっとはぐれていた人を探し当てるまで、犬は延々と旅を続けていくのです。最後は帰れた場所に…とネタバレは言わないでおきますね。犬と人との出会いや忘れない恩=ハチ公みたいなお話かなぁと想像していたのですが、少し思っていた物語とは違いました。字数が少なめで太い本のわりに直ぐに読めます。感動的なストーリーかと思いましたが、ちょっと都合よい展開とラストだったので…読みはじめよりも中盤からモチベーションが下がっていくという…珍しいパターンの小説でした。読んで後悔という事はありませんが、なんだか残らないお話。そしてこの犬は〇神か?とちょっと思ってしまう、妙な後味の悪さがありました。犬が好きな方には響くかもしれません。私も好きだけどな(^^;どちらにしても震災の爪痕は、人だけではなく犬にも残るのですよね。当たり前だけどあらためて思わされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
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