充たされない

淋しさだけが
心に満ちて

狂おしく
待ち続けた心に

影を落としてゆく

夜明けと共に
消えゆく
『永遠の刹那』


BGM:<八月の鯨>「THE GOSPELLERS」<Love Notes>より
 
 
何を失っても構わないと感じていた。
充たされない心が苦しくて、冷静な判断力を失った一夜。


吐く息も凍ってしまいそうな、寒い冬の夜更け。
安らぐ場所を求めた足は自然に、彼の部屋を選んでいた。

「電話してくれたら、迎えに行ったのに。」

彼が一瞬見せた戸惑いの理由は、すぐに解った。
連絡もしないまま「深夜に独りで」私が現れたから。

「今日は誰も来てなくて。静かだなって思ってたんだ。」

にぎやかな友人達の姿がない居間は、初めての光景だった。
静けさに耐え切れず、大きな独り言を彼の背中に向けてみる。

「お酒、呑みたいな。」

慣れた手つきでコーヒーを用意していた手が一瞬、止まった。

「珍しい。どうした?」

これまでは時間を気にして控えがちだったけれど、
今夜は終電で来てしまった。
冷えた独りの部屋に戻るつもりも、なかった。

「今夜だけ。ってダメ?」

曖昧に応えた私の言葉は、無意識の誘惑だったのかもしれない。
遠い日に閉じ込めた想いが封印を解かれて、甦り始めていた。

見知った彼女の存在をその夜だけ、記憶から消した。



人肌の温もりに心地よく包まれながら、目覚めた朝。
残っていたのは酔いではなく、罪悪感だった。

「全部忘れて、ね。」

そして元通りの、兄を慕う妹役に戻る。
記憶の底に深く沈めたのは、誰も知らない『二人だけの夜』。


BGM:<Trip>「CHAGE AND ASKA」<SUPER BEST Ⅱ>より
 
 
味気ない映像と音声が、一日の終わりを事務的に告げていた。

小さく手を振りながら彼を見送ったのは、ほんの数分前。
空のグラスをぼんやりと見つめながら、
突然冷えてしまった部屋に戸惑う。
静かな孤独を楽しむ時間が、今ではどこか物足りない。

不意に蘇る、甘いひと時。


雨を避ける様に駐められた車に乗り込んだ。
明らかに寝不足の彼は、短時間の仮眠を取っただけらしい。

「寝ないで本当に、平気?」

軽くうつむいた彼の肩に手を伸ばしかけたその瞬間、
息が詰まる程に強く、強く抱きしめられた。

「逢いたかった。」

聞き慣れた声が耳元で、甘えるように優しく響く。
言葉にならないまま、私は身を預けていた。



彼が帰宅する頃に「おやすみなさい」とだけ送信する。

今夜だけはゆっくり眠って欲しいと願いながら、
安心したようにまどろむ彼の寝顔を想う。

柔らかなその温もりにずっと触れていたくて、『恋しいけれど』。


BGM:<声のおまもりください>「BEGIN」<ビギンの一五一会>より
 
 
触れ合ったら
離せないと
知りつつ惹かれ

心のままに

あなたを想う
自由さえ

限られた時空間で
『彷徨うだけ』


BGM:<NO MORE TEARS>「THE GOSPELLERS」<Love Notes>より
 
 
「愛してる」

微熱の続く
身体の奥から

・・・溢れ出す

隠し切れない
『甘い刹那』


BGM:<U'll Be Mine>「THE GOSPELLERS」<Love Notes>より
 
 
残酷な無言に痛む心を抱えたまま、眠れない夜が続いた。

最後に贈る彼へのメッセージ。


触れられた瞬間、甘い痺れが背筋を伝った。

微熱。

優しい指先が頬の輪郭をそっとなぞってゆく。
彼の顔を見る事も出来ないままに、うつむいていた。

身体の奥から湧き上がる愛しさ。

柔らかな温もりに包まれながら、甘い吐息を幾つも飲み込む。
その瞬間、自然と指先に力が籠もった。



優しさの裏側に傷付いた心を抱えていた彼。
その辛い記憶を打ち明けてくれた日から、
惹かれてゆく想いを抑える事は、出来なかった。

一途に彼だけを見つめ続けた時間。

狂おしい程に求めた、何もかもが『初めての恋』。


BGM:<びんた>「大江千里」<HOMME>より
 
 
時の永さが痛みだけを増幅させてゆく。

愛する事の罪を初めて知った恋。


「もう少し、早く出逢っていたら。」

夜明けが迫っていた。
藍色に染まり始めた空を見上げて、長いため息をつく。

「全てが違っていたかもしれないね。」

そして、静かな日々が訪れた。

心を激しく揺さぶる甘い疼きを抑えながら、
それでも友達に戻れると信じていたのは、
私だけだったのだろうか。



「どうか一言、返事を下さい。」

別れの言葉すら届かない事を知りながら、最終期限を送信する。
この恋を忘れてしまおうと心に決めて、強く自分に言い聞かせるために。

「さよなら」でもいいから、もう『待たせないで』。


BGM:<遠く離れても>「大江千里」<HOMME>より
 
 
見えない力で
強く
引き寄せられる

「奇跡」

きっともう
繋いだ手は

『離せなくて』・・・


BGM:<彗星>「槙原敬之」<太陽>より
 
 
声を聴いたら
想いを
抑え切れず

触れ合えば
きっと
離れられない

持て余す感情に
いつも
乱されて

心の舵は・・・
『いつも不安定』


BGM:<Love Love Love>「平井堅」<THE CHANGING SAME>より
 
 
苦しいくらい
あなただけに
触れたくて

抑え切れない
想いだけが

不意に
こぼれだす

永遠に続く
時間があるなら

あなたと
過ごしていたい

『ひと時を』


BGM:<Ring>「平井堅」<LIFE is...>より