映画『ナイル殺人事件』 | 牧内直哉の「フリートークは人生の切り売り」Part2

映画『ナイル殺人事件』

『ナイル殺人事件』

(上映中~:J-MAXシアターとやま、TOHOシネマズファボーレ富山、TOHOシネマズ高岡)

公式サイト:https://20thcenturystudios.jp/movie/nile-movie.html

 

エジプトのナイル川をめぐる豪華客船の中で、

美しき大富豪の娘リネットが何者かに殺害される事件が起きました。

容疑者は彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員という中で、

名探偵エルキュール・ポアロが事件の真相に迫る・・・というミステリーです。

 

オリエント急行殺人事件に続く、

ケネス・ブラナー版のエルキュール・ポアロです。

1978年版のピーター・ユスチノフ版の映画はテレビで2回ぐらい、

あと、テレビドラマ『名探偵ポワロ』でも1回だけ観た記憶があります。

ポワロ役に関しては、誰が演じているかというよりは、

ドラマ版のデヴィッド・スーシェを吹き替えていた

熊倉一雄さんの声の印象が強いです。

 

(以下、“適度”にネタバレして・・・るのかな?ご了承ください)

要は古典作品なのです。誰が犯人か分かった上で観てる。

『オリエント急行殺人事件』の時も思いましたが、

なぜ今、ケネス・ブラナーはエルキュール・ポワロを撮ろうとしてるんでしょう。

ウエスト・サイド・ストーリーの原作(?)『ロミオとジュリエット』や

シラノとはまた別の古典感ですが、

改作自由だとは思う一方で、それはどうなの?と思う点もあります。

 

まずはポアロの口髭の秘密。これ、アリなんですかね?

第一次世界大戦に従軍していたとか、過去の恋愛とか、

そもそも原作にはない設定だと思いますが、それ要ります?

本編の中でもあまり活かされてないようでしたし、

事件解決後にも、その口髭を意識したシーンがありますが、

シリーズが続いて、またそこがクローズアップされるとなれば、

あとから邪魔にならないだろうか・・・と思いました。

 

そして、本編のキャスティングや設定の変更。

20世紀前半を舞台にした物語なのですが、

リネットをガル・ガドットが演じているのは美女だから良いとして、

作家だったはずのサロメ・オッタボーンはアメリカの黒人歌手に変わり、

また、同性愛者が登場するなど、いろいろアレンジされています。

ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)を意識した設定や配役は、

昨今の特にハリウッド映画の潮流でもありますが、

うーむ、時代背景を考えると、本作には必要ないような気もしました。

 

とはいうものの、『オリエント急行~』よりは私は好きです。

あれは事件の真実は面白いけど、結末が腑に落ちないんですよ。

そこが好きな人も多いようですが、私はそうでもないので。

あと、最近ちょっとこんな話が多いような気がしますが、

本作でも愛が倫理を凌駕する形で事件が起きました。

といっても、犯人は理屈ではそういってるけど、

結局は“金”なんとちゃうの?っていう解釈もできるんですけどね。

 

客船の乗客全員に殺害の動機があるので、

ポワロは一人一人を犯人だと仮定して尋問をしていきます。

私、実際にこんな感じで警察官から尋問されたことがあるので、

聞かれる側はさぞかし腹立たしかったと思いますが、そこも見どころです。

会話の中にヒントが隠されています。私たち観客は気付くことができるか?

 

当然ですが、ポワロはそこから真相にたどり着きます。

が、彼って本当に名探偵なんですかね。

結局、3人も殺されてる。しかも、2人目以降は防げたかもしれないのに。

同じ意味で金田一耕助も、その孫も名探偵なのかな?と思ってます。