こんばんは。今日は、俳優のめざすものについて書いてみたいと思います。
マキニウムでは、2000年の旗揚げ以来、多くのワークショップをやってきましたが、その都度、必ず参加する方に聞いていることがあります。それは、「“いい演技”って、どんな演技ですか??」ということです。
時には1時間かけて、“いい演技”について話し合います。
どうしてそんなに時間をかけるかというと、演技というものの目標がものすごくあいまいで、「どこがゴール地点なのか」がはっきりしないまま、多くの俳優が苦労していると僕が思っているからです。
というより、「どこがゴール地点なのか」がはっきりしないからこそ、苦労してしまうのだと思います。
人によっては、「感情を豊かに表現できること」と言います。「存在感があること」という人もいます。他にも
・「間」を表現できる。
・お客さんに感動を与える。
・見ていて飽きない。
・滑舌がしっかりしている。
・作者の意図を表現できている。
・・・
と、“いい演技”についてのディスカッションを始めると、次から次へといろんな意見がでてきます。他にも、
・仲間へのおもいやりがある。
・全力でがんばっている。
などなど、話は尽きません。
で、結局、
「お客さんがいいって言えば“いい演技”だ」
とか、
「そもそも“いい演技”なんて存在しない。それは人の価値観によって変わるものだから」
という話になったりまでします。
実際にそう考えている演出家や、ベテランの俳優の方もいるかもしれません。
ただ僕らは、それでは何をどう求めていけばいいかわからなくなってしまう。“めざすもの”を見つけなければ、演技の上達も何もなくなってしまうと考えます。
だから「“いい演技”とは何か」をしっかり定めて、そこに向かうようにしなければいけないと考えます。
例えば陸上競技の選手は、中学校や高校の陸上部に入ったとして、そのうち自分が何の競技に出場するか決めるでしょう。100mの選手になるのか、1000mの選手になるのか、10000mの選手になるのか、それとも高跳びか。幅跳びか。
どの競技に出るかによって、ゴール地点は違うし、鍛える筋肉も技術も違う。陸上の選手はそれぞれのゴールに向かって、練習していくことになります。
陸上競技の場合、それぞれの競技には明確な“ゴール地点”があります。100mであれば、「100mを走った時の距離のタイム」を短くしていくことがゴール地点で、高跳びであれば跳ぶバーの高さをあげること、幅跳びはジャンプの距離。
しかし俳優は、その“ゴール地点”が非常にあいまいです。ですから俳優は、“ゴール地点”がわからないままひたすら練習をし続ける、ということになってしまいがちなのです。
「演技はそんなもんだよ」
そう言う人がいるかもしれませんが、先ほども書きましたように、僕はそれが多くの俳優を悩ませているものであり、この“ゴール地点”をはっきりさせることが、「俳優の進化」に不可欠なものだと思います。
僕はこれまで演技を見てきて、俳優の“ゴール地点”は以下の2つを高いレベルで実現していることだ、という結論に達しました。
・俳優が魅力的である。
・登場人物に見える。
この2つのテーマを、高いレベルで実現していること。これが“いい演技”というものだと考えます。
この2つのテーマを高いレベルで実現していれば、多くの観客や、演出家や、オーディションの審査員も納得できるのではないでしょうか。
今日はここまでにしたいと思います。
次回は、この2つのテーマを少し掘り下げて書こうと思います。