前回、俳優の“ゴール地点”は
・俳優が魅力的である。
・登場人物に見える。
この2つだと書きました。
もちろん、俳優には、“発声”や“滑舌”、それから舞台での位置取り、舞台の常識(袖幕に触っちゃいけない・どこに立つとお客さんから見えてしまう等)、舞台の専門用語などの知識、演出の“ダメだし”の吸収の仕方など、必要なことはたくさんあります。しかしそれらは、例えば陸上競技で言えば、トラックに泥だらけの靴で上がらないとか、足の上げ方に対する知識などと同じようなことで、“ゴール地点”ではないのです。
陸上、中でも100mの選手は「100mの距離をどれだけ速く走れるか」が重要であり、もし100mを9秒フラットで走れる選手がいたら、たとえトラックに泥だらけの靴で上がろうが、足の上げ方がおかしかろうがその人はオリンピックに選ばれるだろうし、俳優で言えば舞台での常識を知らなかったり多少発声や滑舌ができていなかったり演出の“ダメだし”の吸収が下手であろうと、
・俳優が魅力的である。
・登場人物に見える。
この2つのテーマを高いレベルで実現していれば、オーディションにも受かりやすく、お客さんからの好感度も高く、客演に呼ばれることも多くなるのです。もしこの文章を読んでいるあなたが俳優や声優を目指すのであれば、ゴール地点はこの2つだということをしっかりと認識するとよいと思います。
さて。
簡単なことなのです。
俳優の目指すことは、“たった”この2つなのですから!
しかし。
この“たった”2つが、実は大変なくせ者です。
そのことをこれから少し考えていきましょう。
まず、俳優の目指す2大テーマのうち、
・俳優が魅力的である。
を考えてみます。
魅力的になるために、どうすればいいでしょうか?
即答できる方は、少ないのではないでしょうか。あ、ここで「魅力的」と書いたのは、「日常の姿が魅力的」ということではなく、「舞台上で魅力的に見える」ということです。
僕がワークショップをやる時には、必ずこのことについてディスカッションをしています。「魅力的になるために、何をすればいいでしょうか?」
・自分を知る。
・自分の良さを知る。
・自分がどう見えているかを知る。
・長所を伸ばす。
・優しくふるまう。
・イメチェンをする。
いつもこんな答えが出てきます。
しかし、これらのことは実はとても難しいことです。
昔、ある有名な演技指導者に「魅力的になるにはどうしたらいいですか?」と僕の友達が聞いたそうですが、その時は「そんなもん自分で考えろ!」と言われたそうです(笑)。
確かに、“魅力的になる方法”がわかったら、苦労しないのかもしれません。
しかし僕らはあきらめません。
僕は、10年くらい前に、こういう考えに行き着きました。
「人は、その人の“ほんとの欲求”が出ているとき、魅力的なのではないか」
これはあくまで僕の仮説です。本当にそうかどうかはわからないし、そもそも“魅力”を感じるかどうかというのは、「見る側」がどんな人かによっても違ってきます。
しかし、それでは僕らは進めません。俳優の“2大テーマ”の一つをどうすれば達成するのか、仮説でもなんでもなければ進めないのです。
実は、このことは「仮説」に過ぎませんが、これまで多くのワークショップで多くの共感をいただきました。そして今では、このことは確信に変わっています。
「人は、その人の“ほんとの欲求”が出ているときに、魅力的になる。」
マキニウムの18年の実績の中で、これは証明されたと思っています。“ほんとの欲求”が出てきたとき、その人は魅力的に見えます。それが怒りの欲求でも、かっこつけの欲求でも、バカをやりたい欲求でも、かわいらしくなりたい欲求でも、どんな人も魅力的に見えるのです。
もちろん、中には「そんなものは見たくない」という人もいます。「人のかっこつけてるところを見て、何が楽しいんだ」そう考える人もいます。しかし、そういう人は少数派です。僕が、その少数派の一人でした。木村拓哉という人を見て、「あんなものを見て、何が楽しいんだろう」と、僕はそう思っていました。しかしそれは、実は僕が少数派だったのです。世の中の多くの人は、木村拓哉さんを見て「魅力的だ」と感じるのです。特に舞台では、自分の「やりたいこと」を思い切りやっている人が、やはり単純に魅力的に見えるのです。
さて。少し長くなってしまいました。
次回は、俳優の2大テーマのもう一つである「登場人物に見える」ということを掘り下げていきます。
そして、実はこの
・俳優が魅力的である。
・登場人物に見える。
という俳優の2大テーマは、完全に敵対関係だということをお伝えしていきます。
魅力を磨く。自分が輝く。演劇集合体マキニウム俳優トレーニング