おいしいものを食べることがストレス解消法

 

食べることが趣味

 

このような人は少なくないと思います。

 

食べるなら、まずいものよりもおいしいものの方がよいですよね。

 

 

では、おいしさはどのように決まるのでしょうか。

 

料理人の腕もあるでしょうが、それだけではありません。

 

食べものの味は、素材をつくる人の気持ち、料理をする人の食材との向き合い方によって変わってきます。

 

 

 

 

新桶初しぼりの醤油、うま味の数値がえらい高いんですよ

(中略)

ほかの桶に仕込んだのと材料は同じやし、何が違うのか説明がつかんのです

 

『巨大おけを絶やすな!』 竹内早希子

 

 

蔵造り醤油というものがあります。

 

一般的にスーパーで売られている醤油は、ステンレスやホーローのタンクを使って、短時間に大量生産されています。

 

蔵造りの醤油は、大きな木桶(高さ2m、直径2mくらい)を使って、蔵や木桶にすみつく微生物の力によって、1年以上の歳月をかけてつくられます。

 

蔵造りの醤油をつくっている蔵は数を減らしていて、醤油をつくるために必要な巨大桶をつくる職人さんも減ってきています。

 

木桶がなければ、蔵造りの醤油はできません。

 

「巨大桶を絶やしてはいけない」そう思って巨大桶を未来につなぐために活動をしはじめたのが、ヤマロク醤油の山本康夫さんです。

 

その山本さんの言葉が引用した部分です。

 

 

ヤマロク醤油は創業150年で、最初はもろみ屋でしたが、3代目のころから醤油をつくるようになりました。

 

醤油は木桶を使ってつくっています。

 

あるとき、木桶の1つが壊れてしまいます。

 

修理をしたくても自分では直せない、新しいものを購入したいけれど、製造しているところがほぼない。

 

いろいろあって、山本さんは大工の仲間と一緒に自分たちで木桶をつくってしまいます。

 

そして、新しくできた木桶で醤油をつくったところ、蔵で一緒に仕込んでいるほかのものと味が違ったのです。

 

原料はまったく同じです。

 

同じ蔵で作っているので、温度や湿度もほかに発酵・熟成させている醤油と同じです。

 

違うのは木桶だけです。

 

 

桶プロで初めてつくった第一号の新桶が、ほかの桶と何が違うかって言うたら、みんなの”思い”がいっぱい込められている。それしかないんですよね・・・・・

 

(同上)

 

桶プロとは、木桶職人復活プロジェクトのことです。

 

このプロジェクトでつくった木桶は、醤油がもれないように、成功するようにと、木桶つくりにかかわった人たちの思いが込められています。

 

その思いが醤油に伝わったのでしょう。

 

 

「気持ちが食材に伝わるのか」と思うかもしれませんね。

 

同じ材料、同じ分量、同じホームベーカリーを使って、何人かがパンをつくったことがあります。

 

同じ材料で、同じ分量で、同じ機械ならば、すべて同じ味になるはずです。

 

でも、実際できたものはそれぞれ味が違いました。

 

つくるときの気持ち、食材に対する向き合い方は、人それぞれ違います。

 

その気持ちが味に影響を与えたのでしょう。

 

 

気持ちなんて、と思うかもしれません。

 

それでも、見えない力は存在しています。

 

お母さんが作ったおにぎりとコンビニのおにぎりでは、おいしさが違うのを実感している人もいるでしょう。

 

これも作る人の気持ちが影響しています。

 

目にみえない気持ちは、食材に伝わっているのです。