入院をすれば病気はよくなる、と考えている人は多いのではないでしょうか。
たしかに、入院をすれば集中的に治療をしてもらえるし、仕事などせずに体を休めることができるので、よくなりそうです。
でも、入院をしたために状態が悪くなることがあります。
閉鎖病棟に入ったある人は、入院をする前は普通に会話をしたり、身の回りのことができたりしていました。
これが、入院をしてしまったために、歩行ができない、コミュニケーションができない、視線があわない、といった状態になってしまいました。
入院前よりも状態が悪くなってしまったのです。
この人は、なぜそうなってしまったのでしょうか。
それは、主治医が強い鎮静をかけるような投薬を繰り返したからです。
精神科で使われる薬は、脳に働きかけるものが少なくありません。
脳は体をコントロールしている部分です。
薬が脳に働きかければ、体をコントロールする働きに影響がでても不思議ではありません。
うつ病で向精神薬を何種類も飲んでいて、無意識によだれがでてしまう、呂律がまわらない、だるくて動けないといった状態になってしまった人もいます(詳しく知りたい人は『「うつ病」が僕のアイデンティティだった』を参考にしてください)。
かつて言葉を話して歩いていた青年が、今は枯れ木のようになった手足を車椅子に拘束されている――。
精神科病院というのは、精神の病を治療したり、精神の障害をサポートしたりするためにあるのではないか?入院した結果、改善するどころか、もともと異常のなかった言葉と歩行を喪うなどということがありうるのか?いや、ありうるから、目の前に彼がいるのだ。
『牧師、閉鎖病棟に入る。』 沼田和也
閉鎖病棟は閉じられた世界なので、どんなことがされているのかよく知られていません。
そこでは、人を人として扱っていなかったり、投薬がどんどんされたりなど、「そんなことしないよね」といったことが行われています(すべての閉鎖病棟でそうとは限らないかもしれませんが)。
骨折や感染症など、ある種の病気は入院が必要かもしれません。
でも、すべての病気が入院を必要とするのではありません。
入院をしたために、状態が悪くなることもあります。
入院をすればよくなる、とは限らないのです。
治療を受けることで何がされるのか、それによってどういった影響があるのか。
医師のいうことを何でもうのみにするのではなく、自分で調べて考えることが、自分の身を守るためには大切です。