苦手な方はどうぞスルーしてくださいね。

今年3月、私自身が福島の津波被災地を訪れる機会があり
見て聞いたもののあまりの様相に圧倒され、自分の無力さやふがいなさに
文字通り「言葉をなくし」
この感情を代弁してくれそうな本を探していたときに
夫の本棚から見つけたほんです。
すぐに夢中で読んで、半分くらいでぱったり読めなくなってしまいましたが、
この夏、再び読み始めました。
そして辺見庸自身もこの作品を書いている間、ひどい抑うつ状態になってしまい
途中で書けなくなってしまったそうです。
まあ、そうだろうな・・・と思うほど、
今起きてる重すぎる現実をなんとか言葉にしようともがき苦しんでいて
全編重く、暗く、怒りと悲しみににみちています。
でも、やはり彼の作品をこの夏読みきれて良かった!
辺見庸の渾身の文章。
辺見庸らしい、全身全霊でかき集めた膨大な語彙から
さらに絞りだすように選びぬかれた言葉。
311後、言葉にならないことをどう言葉にすればよいか
一言一言、一行一行、刻み付けるみたいに書いてくれています。
「わたしの死者のひとりびとりの前に
ことなる それだけの歌をあてがえ
死者の唇ひとつひとつに
他とことなる それだけしかないことばを吸わせよ
類化しない 統べない かれやかのじょだけのことばを・・・・・」
3月11日以降のことが、本当にざっくり雑に扱われすぎていて
ネットなどではいろんな言葉がとびかうけれど、
その割にリアルではほとんど話されることがなく、
どんどん気持ちの悪い世界になっていて
私自身ずっとずっとなんだか怒っていたのでした。
この常に怒ってる状態が本当につらかったのですが、
いました!!!私以上に怒ってくれてる人が!
愛とかゆるせとか言わずに、ただただ怒って、ときには深く絶望して
でも、それをなんとか言葉に尽くそうと
具合が悪くなるほどもがいてくれてる人が!!!
それでも、最後はちゃんとすくいがあります。辺見庸、本当によかったね・・・と言えるような。
そして読んでる私も。その「すくい」もやっぱり言葉の力でした。
この夏は骨折していたこともあり、いろいろな本を読み、
夏の終わりにアウシュビッツを生き残った人達の精神状態を描いた
「夜と霧」を読んでから(こちらも極限状態での希望が描かれていたすごかったです)
311を思い出し、この本を再び手にとることができました。
骨折して、様々な本を読んで、この本を読んで、
最近になって私のしつこい怒りはだいぶ癒えていることに気づきました。
明るく、さわやか、シンプルな文章では決してないので、
万人におすすめできる本ではありませんが、
私にとっては身近においておきたい一冊になりました。
いつか「もういいよね」と手放すときが来ることを思いつつ。