犯人は「○○」だったんですけど!
第9話
先に口を開いたのは熊本だった。
「重要書類を探してるんです。最後に見たのはニャイドルさんとさるバイト君です。けれども最後に二人が見た場所にないので、二人の責任ではないようです。」
「ソリャ、ナンノショルイダネ」
社鳥が尋ねる。
「大蛇出版様との契約書です」
犬リーマンさんが答えた。
私は社鳥の言葉を待った。社鳥は私を疑うのかな・・・。
怒られるんだろうか…。ああ…。
社鳥は目をぱちぱちさせた。
「ナンダ」
意外と、なんでもなさそうに社鳥が言った。
あれ??
「ソノショルイナラ、アサカラ、ボクガモッテイッタヨ」
…。
…へ?
一同、静止。
「オオヘビサンガ、ハヤクキメタイッテ言ウカラ、朝カライッテキタンダ」
部屋全体から、安堵のため息が漏れた。
「なんだ~」「おい!」「社鳥~っ」
いろんな声があがった。
そうだったのか…。
「社鳥、鍵持ってらしたんですか」
オツボネギツネさんが尋ねる。
「モッテルヨ、ますたーきー。」
「じゃあ昼からの打ち合わせは…」
「終ワッタカラ、行カナクテ、ダイジョウブ」
「よかったっすよ~。俺、ニャイドルさんに迷惑かけちゃったと思って…」
さるバイトがばたっと椅子に倒れこんだ。
自分のせいじゃないのに、かなりてんぱってたらしい。かわいそうに。
へろへろへろ…。
よかった、ほんとよかった。力が抜けた。
そのとたん…思い出した!
!私封筒を「見てない」って言った受付豹に…「うそつかないで」って言ってしまったのだった…。
う・・・。
私はきまりわる~く受付豹のほうを盗み見た。
けれども、さらに、思い出した!!
段ボール。
「失くしたものは失くしたんでしょ、認めて、謝りなさいよ。」って言われたこと。
私は黙って仕事に戻った。
★
私は本作りの用語を少しずつ覚え始めていた。
こうやって本はできてくんだってのは、見ているだけでも楽しい。
はじめに作るのが「台割」。3ページ目は目次で、4~8ページが巻頭特集で…といった内容を表にする。
次に作るのが「ラフデザイン」。
全部の会社がそうかどうかはわからないけど、うちでは手描きで作る。
ここにタイトル、ここに本文、ここにイラストとページごとに配置を決める。
そして、それをデザイナーさんに渡す。
するとデザイナーさんがちゃんとしたデザインを作ってくれるので、それに合わせて文字数を決める。
そこからはライターさんの仕事。会社で企画した内容に沿って、文章を書いていく。
できあがってからは・・・これが結構めんどくさい、校正。
文字の間違いとか、データや人名が間違ってないかを何度もチェック。
それが目下の私の仕事。
ちょうどランチ特集のページを任されたので、資料と照らし合わせたり、お店のHPで営業時間を確認したり、結構細かい。
まだそれはいいんだけど、困るのが「表記の統一」なのである。
文字は全角、数字は半角、「等」は「など」とひらがなで書く、といったことが本ごとに決まっている。覚えきれないほどルールがあるので、やたらと時間がかかった。
「そのうちルール覚えるから、すぐ慣れるよ」
犬リーマンさんが苦戦している私を見て笑った。
「はい…」
「一回印刷しちゃうと直せないから、本は大変なんだよ」
そう言いながら、犬リーマンさんはうれしそうだった。
大変だからこそ、楽しい、みたいに見える。
会社に入ってやっと雑誌づくりにかかわれているため、ちょっとがんばろうと思った。
けど、ほんとに時間がかかる。目が疲れるのね~本づくりって。
そのとき、メールが来た。
あ、ミーコじゃないかっ!
―久し振り! 元気にしてる? もぉいろいろありまくりだよ~っ。ストレス発散必要じゃないっ? 遊びたいよぉ^^今日電話していいかなぁ?
お。
ミーコは私の親友。てか、がっこ卒業してからなんだかんだ会ってない。
わあ、超うれしい。
―まだ仕事だから終わったら電話する! あそびたいね~っ♪
ミーコとしゃべるのが楽しみで、疲れ、吹っ飛んだ。
元気出た、ありがとミーコ。
心の中でお礼を言う。
ほんの数ページしか進んでいないのに、もうおなかが減ってきた。
8時か・・・。ごはんにしよ…。
★
外に出ると、コンビニから帰ってくる受付豹が目に入った。
あ…
なんとなく、急いで回れ右をしようとしたのに、向こうが私を見つけてしまった。
私は言葉を交わさずすれ違うつもりだったのに、
「ニャイドルさん」
受付表に呼び止められて立ち止った。
受付豹はつかつかと私のほうに歩いてきた。
こんどはなんだよっ・・・。
私は身構えた。
受付豹は私の目の前まで来て、立ち止まった。
「疑ってごめん」
「えっ?」
私は耳を疑った。
受付豹が先に謝った。
先、越されちゃった。
「ニャイドルさん、なんか頼りないから、失くしたって疑っちゃった、ごめんなさい。」
いきなり、頭を下げられたので、私はあわてた。
ちょっちょっちょ・・・
「いえ、私も…自分が失くしたんじゃなはずだから、つい、周りの人疑っちゃって」
私も謝った。
「ごめんなさい」
先に謝った受付豹はかっこよく、あとからの私はなんかカッコ悪。
やっぱり、段ボールのこともわざとじゃなかったのかも、そう思い始めていた。
しかぁし…
「とにかくこれからも正々堂々と勝負させていただきますからね」
受付豹が、不敵に笑った。
この人、ちょっとタダものじゃないかも…。私をまっすぐに見る目にはそう思わせる雰囲気があった。彼女は、そのままくるりと背を向けて、つかつかと会社に戻って行ったのだった…。
せ…宣戦布告?
勝負って…。何の勝負だよ~っ、もう!
★
仕事から帰ってくると11時だった。
ミーコに電話すると、いつもの声が飛び込んできた。
「ねえ聞いてよ聞いてよ!」
「聞いてるよ」
思わず、笑ってしまう。懐かしい、友達の口癖。
「普通、人にばんっとかいう置き方する?なんかすっごいイヤミっぽくてさあ。それでね、聞いてよ」
「だから聞いてるって。」
支離滅裂なミーコの話は、いつも解読に苦労をするけど、どうも、ウマの合わない上司がいるらしい。どこも同じだなあ…。
「でさ、どう、そっち?」
「まったく同じ。ウマの合わない上司と、入社のときに聞いたのとは全然違う仕事と。」
「アハハハハ」
私が答えると、二人で大笑いしちゃった。ミーコと話してるとどんなにつらいことでも、笑い話になるから不思議。
「こゆときってさあ…どうしたらいいのかなあ」
なんだか、私よりもミーコのほうが深刻そうだった。
ミーコ、落ち込むと激しいからなあ…。何度泣いて電話してきたのを受けたか、わからない。でも、仕事のことは何もしてあげられない。
けど、私にはひとつだけ、アイデアがあった。
「ミーコ、週末、あいてる?」
一緒に元気になる特効薬、これしかないでしょ…。
先に口を開いたのは熊本だった。
「重要書類を探してるんです。最後に見たのはニャイドルさんとさるバイト君です。けれども最後に二人が見た場所にないので、二人の責任ではないようです。」
「ソリャ、ナンノショルイダネ」
社鳥が尋ねる。
「大蛇出版様との契約書です」
犬リーマンさんが答えた。
私は社鳥の言葉を待った。社鳥は私を疑うのかな・・・。
怒られるんだろうか…。ああ…。
社鳥は目をぱちぱちさせた。
「ナンダ」
意外と、なんでもなさそうに社鳥が言った。
あれ??
「ソノショルイナラ、アサカラ、ボクガモッテイッタヨ」
…。
…へ?
一同、静止。
「オオヘビサンガ、ハヤクキメタイッテ言ウカラ、朝カライッテキタンダ」
部屋全体から、安堵のため息が漏れた。
「なんだ~」「おい!」「社鳥~っ」
いろんな声があがった。
そうだったのか…。
「社鳥、鍵持ってらしたんですか」
オツボネギツネさんが尋ねる。
「モッテルヨ、ますたーきー。」
「じゃあ昼からの打ち合わせは…」
「終ワッタカラ、行カナクテ、ダイジョウブ」
「よかったっすよ~。俺、ニャイドルさんに迷惑かけちゃったと思って…」
さるバイトがばたっと椅子に倒れこんだ。
自分のせいじゃないのに、かなりてんぱってたらしい。かわいそうに。
へろへろへろ…。
よかった、ほんとよかった。力が抜けた。
そのとたん…思い出した!
!私封筒を「見てない」って言った受付豹に…「うそつかないで」って言ってしまったのだった…。
う・・・。
私はきまりわる~く受付豹のほうを盗み見た。
けれども、さらに、思い出した!!
段ボール。
「失くしたものは失くしたんでしょ、認めて、謝りなさいよ。」って言われたこと。
私は黙って仕事に戻った。
★
私は本作りの用語を少しずつ覚え始めていた。
こうやって本はできてくんだってのは、見ているだけでも楽しい。
はじめに作るのが「台割」。3ページ目は目次で、4~8ページが巻頭特集で…といった内容を表にする。
次に作るのが「ラフデザイン」。
全部の会社がそうかどうかはわからないけど、うちでは手描きで作る。
ここにタイトル、ここに本文、ここにイラストとページごとに配置を決める。
そして、それをデザイナーさんに渡す。
するとデザイナーさんがちゃんとしたデザインを作ってくれるので、それに合わせて文字数を決める。
そこからはライターさんの仕事。会社で企画した内容に沿って、文章を書いていく。
できあがってからは・・・これが結構めんどくさい、校正。
文字の間違いとか、データや人名が間違ってないかを何度もチェック。
それが目下の私の仕事。
ちょうどランチ特集のページを任されたので、資料と照らし合わせたり、お店のHPで営業時間を確認したり、結構細かい。
まだそれはいいんだけど、困るのが「表記の統一」なのである。
文字は全角、数字は半角、「等」は「など」とひらがなで書く、といったことが本ごとに決まっている。覚えきれないほどルールがあるので、やたらと時間がかかった。
「そのうちルール覚えるから、すぐ慣れるよ」
犬リーマンさんが苦戦している私を見て笑った。
「はい…」
「一回印刷しちゃうと直せないから、本は大変なんだよ」
そう言いながら、犬リーマンさんはうれしそうだった。
大変だからこそ、楽しい、みたいに見える。
会社に入ってやっと雑誌づくりにかかわれているため、ちょっとがんばろうと思った。
けど、ほんとに時間がかかる。目が疲れるのね~本づくりって。
そのとき、メールが来た。
あ、ミーコじゃないかっ!
―久し振り! 元気にしてる? もぉいろいろありまくりだよ~っ。ストレス発散必要じゃないっ? 遊びたいよぉ^^今日電話していいかなぁ?
お。
ミーコは私の親友。てか、がっこ卒業してからなんだかんだ会ってない。
わあ、超うれしい。
―まだ仕事だから終わったら電話する! あそびたいね~っ♪
ミーコとしゃべるのが楽しみで、疲れ、吹っ飛んだ。
元気出た、ありがとミーコ。
心の中でお礼を言う。
ほんの数ページしか進んでいないのに、もうおなかが減ってきた。
8時か・・・。ごはんにしよ…。
★
外に出ると、コンビニから帰ってくる受付豹が目に入った。
あ…
なんとなく、急いで回れ右をしようとしたのに、向こうが私を見つけてしまった。
私は言葉を交わさずすれ違うつもりだったのに、
「ニャイドルさん」
受付表に呼び止められて立ち止った。
受付豹はつかつかと私のほうに歩いてきた。
こんどはなんだよっ・・・。
私は身構えた。
受付豹は私の目の前まで来て、立ち止まった。
「疑ってごめん」
「えっ?」
私は耳を疑った。
受付豹が先に謝った。
先、越されちゃった。
「ニャイドルさん、なんか頼りないから、失くしたって疑っちゃった、ごめんなさい。」
いきなり、頭を下げられたので、私はあわてた。
ちょっちょっちょ・・・
「いえ、私も…自分が失くしたんじゃなはずだから、つい、周りの人疑っちゃって」
私も謝った。
「ごめんなさい」
先に謝った受付豹はかっこよく、あとからの私はなんかカッコ悪。
やっぱり、段ボールのこともわざとじゃなかったのかも、そう思い始めていた。
しかぁし…
「とにかくこれからも正々堂々と勝負させていただきますからね」
受付豹が、不敵に笑った。
この人、ちょっとタダものじゃないかも…。私をまっすぐに見る目にはそう思わせる雰囲気があった。彼女は、そのままくるりと背を向けて、つかつかと会社に戻って行ったのだった…。
せ…宣戦布告?
勝負って…。何の勝負だよ~っ、もう!
★
仕事から帰ってくると11時だった。
ミーコに電話すると、いつもの声が飛び込んできた。
「ねえ聞いてよ聞いてよ!」
「聞いてるよ」
思わず、笑ってしまう。懐かしい、友達の口癖。
「普通、人にばんっとかいう置き方する?なんかすっごいイヤミっぽくてさあ。それでね、聞いてよ」
「だから聞いてるって。」
支離滅裂なミーコの話は、いつも解読に苦労をするけど、どうも、ウマの合わない上司がいるらしい。どこも同じだなあ…。
「でさ、どう、そっち?」
「まったく同じ。ウマの合わない上司と、入社のときに聞いたのとは全然違う仕事と。」
「アハハハハ」
私が答えると、二人で大笑いしちゃった。ミーコと話してるとどんなにつらいことでも、笑い話になるから不思議。
「こゆときってさあ…どうしたらいいのかなあ」
なんだか、私よりもミーコのほうが深刻そうだった。
ミーコ、落ち込むと激しいからなあ…。何度泣いて電話してきたのを受けたか、わからない。でも、仕事のことは何もしてあげられない。
けど、私にはひとつだけ、アイデアがあった。
「ミーコ、週末、あいてる?」
一緒に元気になる特効薬、これしかないでしょ…。






