床管理考「ワックス床とカーペット」の技術差 | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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外国人との付き合いがある所為か、彼らが来日すると(メンテナンス関係者)概ね日本の清潔を大いに褒めてくれるので、鼻の高くなる思いをするのですが、同時に床管理の欠点を指摘される事が良くあります。ワックスとカーペットの管理状態が良くない事を指摘され、それについてのビジネスチャンスの存在を指摘してくるのです。
 この話を聞くと内心忸怩たる気持ちと「またか!」という思いがします。ワックス管理とカーペット管理は確かに米国の先端の会社の方が進んでいます。逆に言えば、ワックス管理とカーペット管理が上手くなければ、米国では商売になりません。ワックスやカーペットにケモノ道が出来る事は(きちんとしたメンテナンス会社が入っていれば)殆どありません。実際に、ケモノ道を作れば、首になってしまうでしょう。
 ワックスを上手くコントロールしようと試みた会社は何社もあるのです。弊社も最初はワックス管理用の製品からスタートしました。今もしっかりしたワックス管理を売り物にしようとしている会社がありますが、中々大変なようです。弊社も日本では導入が難しいことから、水回りを始めとした、洗剤使用の方向へ切り替えました。勿論要請があれば受けて、実施する事は出来るのですが、中々そのニーズが無いのが現状です。ワックス管理とカーペット管理と言う床管理は技術的にはかなり難しいのです。
 先ず、ワックス管理では、床に運びこまれる土砂や靴に付いた汚れの除去の徹底が不可欠です。カーペット管理も同様です。その為、床管理をする上で、マッティング(マット管理)の技術は不可欠になりますが、我が日本では、マッティングが実施されている場所は殆どありません。建物内の土砂の90%は靴の裏から運ばれます。そして、正しいマッティングを実施すると、その85%が除去出来ます。これは、全ての入り口に3.6~4.5mの土砂除去用のマットを敷き、土砂をいつも取れるように、バキューミングをして、マットを綺麗な状態に保つ必要があります。マッティングの土砂除去は最初の1歩で35%、同じ足が二度目に着く事で50%の除去率になりますので、同じ足が二度完全に付く事が保証された長さである必要があります。しかし、現実に正しいマッティングを許容してくれるオーナーや管理会社が殆ど無いのが現状です。メンテナンス上必要であることは世界的には常識なのですが、日本では美観上宜しくない等の理由で、設置が却下されがちなのです。


 

土砂の除去には先ず、ダストモップをしっかり掛ける必要があります。しかし、床の細かな土砂は目に見えませんので、しっかりしたダストモップを掛けているメンテナンス会社は殆どありません。これでは、ワックス床の上の細かな土砂が人が歩く度に、ヤスリの様に傷だらけにしてしまう事は明らかです。また、床に付けられた汚れの除去には洗剤拭きが必須になります。水拭きでは不十分です。モップによる拭き作業が大変なので、自動洗浄機が海外では発達したのですが、日本では自動洗浄機の活用はごく一部でしか見られません。
 また、今のワックスは良く出来ていますので、毎月のワックス再塗布は、日常管理が良く出来ていれば、必要ありません。3か月~半年毎で本来は充分なのです。その間に必要があれば、修復清掃(リストレーションと言います)が必要になります。高速バフィングやリルトレーターの活用です。
即ち、ワックス管理だけを取ってみても

  1. マット管理
  2. ダスティング(ダストモップ掛け)
  3. 床洗浄(モップ・マイクロモップ・自動洗浄機)
  4. バフィング
  5. リストレーション
  6. リコーティング(ワックス再塗布)
  7. 剥離洗浄復帰作業

等が軽くこなせなければ、良いワックス管理は出来ないのです。
 カーペットも同様で、マット管理が必要で、毎日のバキューミングは必須です。その為、掛け方の効率を考えるパス(path=人の通る所)の概念や、入り靴付近から土砂がたまる事からシンク(ゴミ溜め)の概念を理解する必要があります。

 

 その他、中間管理の、ボネットクリーニングや染み抜き方法(洗剤の選定とやり方)の理解、カーペットシャンプーの様々な種類とその実施方法等を理解し、実践出来る事がメンテナンス業をする者にとっては不可欠になっています。
こうしたテクニックはほぼ世界的なもので、世界のメンテナンス協会での技術は先進国であればそれ程、大きな差はありませんし、我が日本の、協会が実施する様々な資格の実施時間があれば、それ程難しくなく、習得が可能なはずなのですが、その技術が我が日本に入ってきていないので、上記の技術習得をしている人が殆どいないのです。
 我が日本は下足の文化で、土足の建物は汚れても仕方ないとの諦めがあるのかもしれません。上記を正しく実施しようとすると、相当な時間が掛かってしまう為、入札に勝てないので、ニースが無いのです。カーペットは痛んでも仕方ない、ワックスは毎年剥離しても仕方ないという事で、日常的な室内の本来の意味での清潔さに対する要求が無いため、技術が発達しなかったのです。これからは、また変わるかもしれませんが、床の衛生性は現代人にとって非常に重要なのは言うまでもありませんので、注目されるべき事柄だと思います。