洗剤の強さ | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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「仕事でお掃除をする方の作業を楽にする事」が使命(ミッション)だと考えています。

 一般の『お掃除』から世界のプロが実践する『メンテナンス』の紹介をしています。

洗剤には様々な種類があります。酸性洗剤、中性洗剤、弱アルカリ性洗剤 アルカリ性洗剤等です。
どの洗剤を使うべきでしょう?強い洗剤は汚れ落ちは良いのですが、リンスが大変だったり、素材を傷めたりする可能性を考慮しなければなりません。マイルドな洗剤は取り扱いは楽ですが、強い汚れには不向きです。その時、その場所に適した洗剤を使用するのがメンテナンスのコツなのですが、どう選ぶべきでしょう。
洗剤の強さはpH値に準拠しています。pH値とは下図の表の様になっています。中学の理科の時間でお馴染みの表です。pH値とは何なのでしょう?下図のコップの中にお水が入っています。水はH2Oと書きますがH+とOH⁻が緩やかに結合した物なのです。コップの中に混ざりものが何もなければ、H+とOH⁻の数が等しくなり、pH値は7(中性)になります。しかし、私達の身の回りの水には必ず何かが混じっています。混ざり物のない純水は工業的にしか作れません。その混ざり物が作用し、H+が多くなったり(酸性です=pHの数が0に向かって減っていきます)、OH⁻が多くなったり(アルカリ性=数が14に向かって増えていきます)します。どちらがどれ位多いかを表したものがPotential Hydrogen(ポテンシャル ハイドロジェン=水素イオン濃度)ピーエッチになります。直訳すれば、水素の入っている可能性と言う事です。濃度を10倍ずつで1単位にしています。倍くらい変わっても身の回りではその変化があまり分からないからです。地震のマグニチュードが約30倍ずつで1単位にしているように、科学の世界では良くある数え方です。


そうしますと、pH11の洗剤を水で薄めて10倍にすると、濃度が10分の1になりますので、pH10になる訳です。もう10倍、即ち最初からすると100倍(10×10)薄めるとpH9になります。これを覚えておくと、汚れもその強さがpHに準拠していますから、例えば床のワックス上に着く「ブラック・ヒールマーク」がpH10程度の汚れと覚えておけば、pH11の洗剤なら落ちるはずですし、10倍にしても落ちるだろうと容易に想像できるわけです。プロ用の洗剤には皆pH値が書いてあります。そして、殆どの洗剤が薄めて使いますので、希釈率を暗算すれば、その洗剤はどの汚れに対応しているか直ぐに分かります。
幾つか覚えておく必要があるのは、端数が出た場合です。いつも10倍ずつではありません。pH11の洗剤を50倍で薄めた場合はどうなるでしょう。本来は乗数ですので、下記の赤い曲線の様になるのですが、計算が面倒ですので、メンテナンスでは直線(分数)で考えてしまいます。実際の差は0.1~0.2しかありませんので、それでいいのです。pH11を50倍ですので、最初の10でpH10になり、その後残った5を0.5として引いてしまいます。9.5になりますので、「pH約9.5 あるいは9.5程度」とすればよいのです。
もう一つ覚えておきましょう。pH8の洗剤を水で100倍に薄めてもpH6にはなりません。水(pH7)で薄めますので、7を超える事はないのです。言い方を変えれば、アルカリをいくら多くの水で薄めても酸にはならないのです。
今回は弊社「洗剤使用の基礎知識」(小冊子)よりも詳しく書いておきました。実務では小冊子程度で大丈夫です。