スパルタンケミカル社の伝説的なインストラクター「リー=レマスター」(故人)の教え方についてです。
彼のワックス教育は非常にスッキリしていました。生徒の前で、真新しいアクリル板を持って来ます。その場で裏紙を剥がし、新しいアクリル板を生徒に見せ、触らせ、「これがワックスだ」と言うのです。ワックスはアクリル樹脂ですので、この薄いものがワックスだという事なのです。アクリル樹脂の特徴は透明性があり、固いという事です。その特徴を生徒に強調します。「アクリル樹脂は硬くて、透明なのが特徴で、これが床に載っているのだ!」と説明し、硬い事を強調しながら、透かして見せ、拳(こぶし)でたたいたりしてみせるのです。そして次に「硬くて透明だけど、これはガラスじゃない!プラスチックはプラスチックなのだ!」と言い、ガラス質のものとは硬度が全く違うのだ(当たり前の事ですが)と言い、ちょっとした砂をその上に捲き、靴を脱いで軽くこするのです。奇麗だったアクリル樹脂が無残にも傷だらけになるのですが、その様子を生徒に見せるのです。「これを起こさないように、土砂の除去を徹底させる事が大切だ」と理解させ、マッティングの必要性、ダストモッピング(床の土砂の除去方法)の重要性、合わせて、洗剤(ノンリンスタイプ)を使用した床の維持管理の必然性を一気に理解させるのです。
真新しいアクリル板に傷がつけられる行為は勿体ないと思う気持ちもありまた、新鮮な物を瞬時にダメな物にしてしまうその行為によって、非常に印象的に頭脳に刻まれるのです。
ワックスに対して、土砂の影響とその防止策が必要な事を強調したと事で、次に移ります。
傷ついたクリル版に水性マジックで落書きをし、それを中性洗剤拭きつけ、クロスで拭き取ります。簡単に取れます(当たり前の事ですが)。次にもう一度落書きをし、その上に別のアクリル板を重ね、上から擦るのです。勿論汚れが取れる事はありません。一生懸命擦る姿が少し笑えるのですが・・・。そこで、リコート(ワックス再塗布)の際に、上に汚れを残してはいけない事を強調するのです。「再度ワックスを塗ってしまったら、その間にある汚れは取れない・・・」従って、ワックス再塗布の際には絶対に汚れを残さない事、アルカリ分を必ず取る事を強調するのです。
最初のアクリル板を傷付ける行為で、日常清掃の重要なポイントを、落書きをアクリル板の上から擦り、取れない様を見せる事で、定期清掃の重要なポイントをシンプルに伝えるのです。
教育の仕方は人それぞれですが、理論を理解し、それを人に伝えるのは非常に難しく、その為にそれぞれのインストラクターが日々簡単でシンプルな伝え方に知恵を絞っているのです。
先ず大切な事は理論を理解し、実践できるようになる事です。そして、次に(最も大切なのですが)それを周りの人に、なるべく簡単に理解してもらい、上手く実践させる事なのです。メンテナンスは様々なものがあります。今回のワックスメンテナンス、カーペットメンテナンス、トイレメンテナンス・・・・。それぞれを正しい理解と適切な方法を取る事で生産性が大幅に上がるのです。