今回はコンプライアンスの面からみていきましょう。会社は作業者の安全に対して、大きな責任がありますが、トイレに手を入れる事は作業者の安全性の面からみても、宜しくありません。コロナウィルスの所為で、感染に対する意識が非常に高まりましたが、私達メンテナンスを請け負うものは、衛生性に対する知識も持っている必要があります。病院清掃のテーマでこのブログでも、何度か書いていますが、感染の仕方は米国では以下の3角形を使って教えています。
この中のモード(感染の仕方)には3つの方法があります。
1.エア・ボーン 空気を媒体にする感染です。
2.ブラッド 血液・体液を媒体にする感染です。
3.表面 手に触れる表面からの感染です(手で、物を運んで食べたり、目や口、鼻などを触って感染します)。
この中で、2番目の血液・体液からの感染症対策に、欧米では非常に力を入れています。Bloodborne Pathogens =ブラッドボーンパソゲンズ=血液由来病原体と言います。この病気は一旦感染すると、完治し難いのです。皆さんよくご存じで、代表的なものはHIV(エイズ)でしょう。この病気も間違いなく恐ろしいのですが、表面からの感染を起こしやすいという意味で大いに注意が必要なのはHBV(B型肝炎)とHCV(C型肝炎)です。今、医療機関では殆どの方が手袋をして対処するのはこの為です。
便器は不幸にして、血液・体液の出る場所ですので、こういうところには注意が必要なのです。便器内に手を入れてゴシゴシ擦りながらの作業という事は、目線が近くなり、場合によっては汚水を浴びる可能性も高いのです。こうした行為を事業責任者が放置するという事は大変好ましくありません。絶対に避けるべきです。便器に手を入れて擦らなければ、汚れが取れないというのは、洗剤の使い方と用具の使い方が適正でないためなのです。
先ず、洗剤を適正な酸性の物を使いましょう。今では塩酸ベースではなく、使いやすく安全なものが数多く出ています。また、前回紹介した、ボウルスワッブ(トイレ用ブラシ)も適正なものを使用しましょう。場合によっては小さな配管用に、小さな棒状のスポンジ等が余分に必要になるかもしれません。しかし、こうしたものは探せば必ず見つかります。
トイレ清掃をする際に、便器に手を入れない事は技術さえ習得すれば、だれでも簡単に行う事が出来るのです。経営サイドの作業者に安全性への固い決意が最も要求されるところなのです。