ワックス管理における剥離清掃を減らすために「ワックスの歴史から」➂ | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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 一般の『お掃除』から世界のプロが実践する『メンテナンス』の紹介をしています。

2.の「定期清掃時のアルカリ残留」ですが、これが最も大きな原因になっています。通常の床清掃を行う場合は「アルカリ性万能洗剤」を使用します。この手の洗剤は通常「万能洗剤」と言われていますが、アルカリ分が結構高いのです。通常はpH11~12程度を数十倍に薄めて使用しますので、使用範囲はpH10(場合によってはpH11程度)前後で使用するケースが多いのではないでしょうか。アルカリ分が高いだけあって、床上の汚れは良く取れます。そして、ワックスはアルカリに弱いので、表面が少し溶けて、光沢がくすみます。少し溶けた部分を研磨剤の入ったパッドで擦ります(青~緑=結構強いパッドです)。その為、汚れともに、ワックス分も少し削り、しっかり汚れ部分が取れる様になっています。洗浄液を回収後、アルカリ分を取り去る為のリンス拭き(水拭き)を通常は2回繰り返します。実はここが問題なのです。床に残った洗浄液のアルカリ分はかなり高いので、リンス拭きには大量の水が必要になります。英語では水拭きを2つの言い方で分けます。Damp Mop(ダンプモップ)とWet Mop(ウエットモップ)です。Damp Mopは日本で言う水拭きです。但し、水の量は日本より、余程多いと考えてください。モップの糸が大量で、水分を一杯含むからです。一番小さな綿モップ(12オンス)での100㎡当たりの作業時間は16.8分です(ISSA作業標準時間)。

もう一方のWet Mopはモップに水を含ませ、それを絞らずに床に撒きます。そして、塗り広げ、同じモップを空のバケツにリンガーを使って、絞って汚水を回収するという作業です。大量の水を使うのが特徴で、100㎡当たり、42分掛かるのです(ISSA作業標準時間=12オンス・ダブルバケツ)。強いアルカリ性洗剤を使用し、その上にワックスを再塗布する場合は床上にアルカリ分が残っていてはいけませんので(ワックスがアルカリ性に弱い事は強調してきました)、中性に戻してからの再塗布が正しいのです。

一方、我が国ではどうでしょう。2回の水拭きに、半渇きのモップを使用しているケースが殆どです。これでは、アルカリ残留が起きても仕方ありません。アルカリ分は困ったことに目に見えませんので、床上には何も汚れが無いように見えるのです。確かに、目に見える汚れは無いでしょうが、アルカリ分が残っているのです。挟み込まれたアルカリ分はゆっくりと作用し、ワックスの汚れの巻き込みを引き起こしていきます。段々と獣道(ケモノミチ)が増えていくのです。こうした状態を続けていくことで、綺麗でないワックスがビルドアップしていくのです。

定期清掃をするサイドにとっても、現状の価格帯では水をたっぷり使ったWet Mop(ウエットモップ)をする事は不可能です。激しい価格競争の果て、今の半渇きでの水拭き(直ぐに乾くので、時間が掛からない)が精いっぱいなのです。

従って、発注サイドも巻き込んだ、作業改定が必要です。

1.ワックスに対する理解を深める

2.ワックスの完全硬化を目指す

3.定期清掃をワックス再塗布ではなく、他の方法(例えば洗浄のみ、洗浄バフ、洗浄+光沢復元剤使用)にきりかえる。

ワックスを使い捨てにするのではなく、自らの資産と考え、それを長く持たせメンテナンスしていくと言う感性が重要になります。

光沢復元剤はワックスではありませんので、ビルドアップしませんし、アルカリ性万能洗剤で落とす事が可能です。剥離せずに、通常の定期清掃で除去が可能なので、便利です。

また、日常清掃とのコラボレーションも重要です。今までが、拭き作業が無かったり、水拭きのみであった場合は、日常的にノンリンスで使用できる洗剤(弊社では日常洗剤と言っています)を使えば、定期清掃時の汚れ具合が圧倒的に違うでしょう。マイクロモップを使えば更に効果が上がります。また、自動洗浄機があった場合はそれを日常的に使用する事で(毎日という意味ではありません)、定期清掃の必要性を少なくする事も可能でしょう。

また、日本ではマット管理が余り盛んではありませんが、マットを使用する事(3.6~4.5m)で、靴の裏の土砂の85%が取れるという事実を何らかの形で利用する事も重要です。ワックスを傷める最大の原因は靴の裏から運ばれる砂だからです。

こうした事柄を発注側と作業側が力を合わせる事で、剥離廃液を大幅に削減する事になるでしょう。メンテナンスは科学的なものです。一つ一つを科学的に、確実に行う事こそ、生産性向上につながるのだと確信しています。