ワックス管理における剥離清掃を減らすために② | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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勿論この間に様々な開発の試みがありました。ウレタン配合(厚みが出て丈夫です)・サーモプラスティック配合(バフによって高光沢に戻しやすいポリマー)・高濃度化…等です。従来のワックスの殻を打ち破るべく、高耐久性を目指し、様々な工夫がされましたが、結果的にはどれも大きな変化をもたらす事が出来ませんでした。弊社取引先のスパルタンケミカル社もウレタンのカバーとアクリルの下地材の2重構造「ラミネートライト」を発売しまた。しかし、同様に成功を収めず、廃番になりました。

この半世紀を超す長い間、いまだに「剥離可能な水溶性アクリル樹脂金属架橋型」を凌駕する製品は出てきません。結局は持ちが悪いか、剥離に問題を起こすのです。大きな変更としては、金属に亜鉛を使用していましたが、現在は環境対応型として、架橋剤に他の金属(主にカルシウム)や樹脂を使用しているものが出ているだけです。亜鉛が無いというだけで、その他の構造や性質は変わりません(臭いは全く違いますが…)。簡単に言えば、現在の樹脂ワックスと剥離は切っても切れない関係にあるのです。剥離が簡単に出来るので、今のワックスが使用されているのです。

樹脂ワックス← →剥離(切っても切れない関係)

さて、それでは何故剥離がひつようなのでしょうか?ここが一番の問題です。樹脂ワックスの構造は非常に簡単に言えば以下の様な構造になっています。

最初に樹脂ワックスが世に出た頃は90%のポリマー(高分子樹脂=ワックスの元と考えましょう)は経年変化で黄ばんだのです。また、5%のレジン(厳密には少し異なりますが、考え方として、硬さを決める接着剤と考えてください)は当時の物は元々少し黄ばんでいました。従って、出たての樹脂ワックスは汚れの如何に関わらず、経年劣化によって毎年剥離する必要があったのです。従って、毎年の剥離は(環境問題もなかったことから)当たり前の事だったのです。1年に1回は剥離をするのですから、各月の定期清掃(洗浄+ワックス再塗布)もそれ程神経を使わずに、雑駁に行っても問題ではありませんでした。しかし、現在のワックスは各メーカーの激しい競争によって、大きく変化しています。ポリマーも非常に透明度が高く、経年による黄ばみを起こす事は殆どありません。また、レジンも黄ばみの無い物が開発され、組み合わされているので、ワックス自体の性質からすれば、10年間は剥離をしなくても、良い物が既に開発されているのです。

 ポリマー

 レジン  → 高性能化

本来なら10年(以上)剥離をしなくても良いはずの樹脂ワックスが頻繁に剥離をしなければならなくなるのは原因が他にあるからです。現在の剥離の原因は以下の様になっています。

現在の剥離の必要性を生じている原因は以下の3点になります。

1.樹脂ワックスの完全被膜形成の阻害

2.定期清掃時のアルカリ残留

3.汚れたワックス被膜によるビルドアップ

 

1.「樹脂ワックスの完全被膜形成の阻害」について述べていきましょう。樹脂ワックスの被膜形成の過程は以下の様になっています。

樹脂ワックスを塗布することで、ポリマーが並び、水が蒸発する過程で、可塑剤(プラスチックを溶かすもの)の濃度が高まり、ポリマーに働きかけ、被膜を形成していきます。お餅状態の様になり、最後に一枚のフィルムになるのです。通常の樹脂ワックスの触手乾燥は概ね15分程です。手で触って乾燥を確認できる状態です。この間はしっかり時間を掛けてやり、完全な被膜が出来るようにしてやる必要があります。扇風機を床に直に当ててしまうと乾燥が早まってしまいます。ポリマーをお芋に例えると、生煮えのままになってしまいます。外から見ても分かりませんが、食べてみると歯ごたえでハッキリするのと同様に、フィルム形成は完全になるように気を使う必要があります。また、触手乾燥は15分でも、フィルム内から可塑剤(主にアルコール)がすっかり抜けるのには1月近く掛かるのです。先ず、被膜形成をシッカリさせる事に充分な注意を払う必要があります。扇風機を床に直に当てるようなことをしては絶対にいけません。被膜が完全であるかどうかは目で見ても分からないのです。不完全な被膜はやがて汚れを巻き込み、汚いフィルムになり、剥離が必要となるのです。被膜の完全硬化を意識しましょう。

また、上記の様に、完全硬化に一月掛るとしたら、毎月の定期清掃はあまり合理的ではない事になります。完全硬化したと思ったら、また新しいフィルムにするのであれば、床はいつも硬化する前の状態であることになってしまいます。

従って、毎月の定期清掃に必ず「床洗浄+ワックス再塗布」が正しいのかを判断する必要があります。勿論歩行頻度にもよりますが、毎月ワックスを重ね塗る事がいつも必要ではない訳です。

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