酸とアルカリどちらを使うか「ここを間違うと大変!」 | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

「仕事でお掃除をする方の作業を楽にする事」が使命(ミッション)だと考えています。

 一般の『お掃除』から世界のプロが実践する『メンテナンス』の紹介をしています。

酸とアルカリどちらを使うか「ここを間違うと大変!」

トイレの特殊性/お風呂の特殊性

pHと臨界ミセル濃度については述べました。さて、実際に洗剤を使用するにあたって、真っ先にする事はその汚れが酸で落ちるのか、アルカリで落ちるのかを判断する事です。ここを間違ってしまうと元も子もありません。酸でなければ落ちない汚れを一所懸命アルカリを強くしても意味ありませんし、逆もまた真です。最初にその汚れにどちらを使うかの判断が重要です。しかし、これは意外に簡単です。私達の身の回りの汚れは圧倒的にアルカリで落ちるからです。酸でなければ落とせない汚れはほんの少ししかありません。

元々アルカリと言うのはアラビア語で灰の事で、石鹸の起源は古代ローマのサポーの丘で、生け贄を祭る祭壇の下の土が体や衣類を綺麗にする事から生まれたと言われています。ものが燃えると殆どが気化しますが、金属であるカルシウム(Ca)やカリウム(K)が炭酸カルシウムや炭酸カリウムとして残ります(石鹸の原料として知られています)。これらを油で煮詰めたものが石鹸になる訳ですが、生け贄から出た油がこの役割を果たしていたのです。石鹸から派生したのが洗剤ですので、多くの汚れはアルカリサイドで落ちる事になるのです。

図の様に殆どがアルカリサイドで落ちますので(赤い丸)、少ない方の酸が必要な場所や汚れを覚えてしまいましょう。それ以外はアルカリという事にすれば話は簡単です。そして、メンテナンスの守備範囲は主に室内になりますので、室内に限定しましょう。酸が必要な汚れが付く場所は

1.トイレ

2.お風呂場

3.(錆)

になります。勿論これ以外にも最近は少なくなりましたが、ペットの臭い取りのカーペット洗剤(最近はバイオ製の物があります)や同じく日焼けしたカーペットの色戻しなどには酸を使いますがこれは特殊な例ですので、一般的には上記の3つで大丈夫です。

トイレは尿石と水垢が問題になるのですが、尿石はカルシウム(Ca)の単体です。カルシウムはアルカリ性ですので、通常の洗剤(アルカリ性です)は効果がありません。カルシウムを溶かす酸が必要になるのです。カルシウムという事は貝殻もそうですので、尿石は便器内にフジツボが付いているのと同じ事になります。これを中性洗剤などや効果の無いアルカリ性洗剤で擦って落とそうとすれば大変な労力が掛る訳です。また、水垢はカルシウムと二酸化ケイ素(ガラスの小さな粒と思って下さい)が混じったものです。一旦付いてしまった水垢は酸性洗剤で取れたり取れなかったりします(50%:50%と言ったところです)。便器の釉(うわぐすり)がガラス質ですので異質のカルシウムが多い場合は落ちますが、同質の二酸化ケイ素が多い場合はとれません。取れない場合は擦って取る(専用の資器材が必要です)必要がありますが、それを取ってしまえば、常に酸性洗剤を使用し続ける事で二度と着くことは無いのです。

お風呂場は次回にしましょう。