トイレに手を入れてお掃除するな!! | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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「仕事でお掃除をする方の作業を楽にする事」が使命(ミッション)だと考えています。

 一般の『お掃除』から世界のプロが実践する『メンテナンス』の紹介をしています。

トイレに手を入れてお掃除するな!!

先週は大阪から九州へと出張でした。金曜日に、九州の或る会社でトイレメンテナンスの2時間講習を行いましたが、作業効率アップと便器に手を入れずにするメンテナンスが主題でした。
 その日の夜にテレビで羽田のカリスマ清掃員の女性が放映され、「羽田の常識」として便器に手を入れて清掃するシーンがあったようです(私は見ていないのですが・・・)。
羽田空港は良いかもしれませんが、それ以外の方が影響されるのではないかと少し心配です。丁寧さを強調したのでしょうが、一般的には好ましくはありません。
 便器に手を入れて清掃するのは(このブログでも何度も書きましたが)先進国では日本だけです。日本ではかつてトイレ用洗剤が塩酸ベースのものしかなかった頃、事故が続出したと言う経緯もあって便器に手を入れて清掃する事がビルメンテナンス業界での常識になってしまったのです。
 建物の中でトイレとお風呂場は特殊な場所で洗剤の方向が逆なのです。業務用のトイレは使用頻度が激しい事から、便器内に尿石と水垢が付き易いのですが、尿石はカルシウムの単体で、水垢はカルシウムと二酸化ケイ素(ガラスの小さな粒と考えて下さい)が混ざったものになります。どちらもカルシウムが大きく関係し、カルシウムはアルカリ性である事から従来の洗剤(殆どがアルカリ性です)が役に立たず、酸が必要になるのです。
 酸が嫌われた我が日本では
物理的力+化学的力
の化学的力が効かない事から、必然的に物理的力を大きくする、即ち便器に手を入れてゴシゴシ擦るしか方法が無くなってしまったのです。酸性洗剤が売れない事からメーカーも開発を怠るという悪循環が起こったのです。
 実際に弊社でトイレ用洗剤の販売を始めた10年近く前には大手のメンテナンス会社の殆どの方が
「弊社は酸性洗剤を使用しません!」
と胸を張って答えられていました。
「それではトイレ清掃をどうするのだろう?」と思ったのですが、便器内に手を入れて時間を掛けて擦ると言うのがその解だったのです。
その時に市場に合ったのは全て塩酸ベースだったので、実際には「塩酸を使わない」と言う意味だったのです。
弊社には安全なクエン酸ベースの洗剤がありましたので、塩酸と異なり安全で、作業効率も上がり、トイレに手を入れずにお掃除出来る事を紹介し続けています。
便器に手を入れてお掃除する事は以下の点で好ましくないのです。
1. お客様に対する衛生性
2. 作業者の安全性
3. 業界の尊厳として

作業をする人は勿論手袋をしているのでしょうが、便器に入れた手袋であちこち触らないとも限りません。冬場に猛威を振るうノロウィルスは感染力が非常に強いのですが、噴口感染と言う渾名があるように、便の不始末から感染するケースが圧倒的に多いのです。便器内に手を入れて清掃していたら防ぐのはほぼ不可能でしょう。

作業者に対する安全性の面からも大いなる考慮が必要です。感染には血液・体液から感染するブラッド・ボーン・パソゲンズと言う病原体があります。HBVやHCV等です。こうした感染に対する構えとしては非常に問題です。便器は血液・体液が出る場所ですので、手を入れて清掃すると言うのは、手袋が破れていたり、顔が近づく事から、目や口と言った場所から病原体が入る可能性を否定できません。作業者を守ると言う立場からも感心出来ないのです。

最後にこの業界の尊厳として如何でしょうか?トイレに手を入れていて、この職業に誇りを持ち続ける事が出来るでしょうか?現実に正しい洗剤と資器材を使用すればこうした事態を避け、手を入れずにお掃除出来るのです。

但し、私は決して、上記カリスマ清掃員の女性を非難しているのではありません。この問題は作業者よりも管理者・責任者が感心を持つべき事であろうと思います。

繰り返します。トイレに手を入れて清掃するべきではありません。
病院清掃では絶対にやってはいけない清掃方法です。