新メンテナンス概論④‐2「メンテナンスの考え方」ワックスに寄り道Ⅱ | お掃除とメンテナンスのプロ 矢部要のブログ

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新メンテナンス概論④‐2「メンテナンスの考え方」ワックスに寄り道Ⅱ

 先日はワックスが金属架橋しており、アルカリに弱い事を書き、最後に扇風機が感心しないと書きました。今日はその理由を述べましょう。
 先ず第一にワックスは水性塗料の一種です。従って、大部分は水です。その中に有効成分が入っており、そのパーセントが17%とか20%とか言う表示になっているのです(一般に樹脂ワックスでは17%が最も安定的と言われています)。
 ワックス有効成分の組成は90%がポリマー(プラスチックの小さな粒と考えてしまいましょう)と5%のレジン(ポリマーの接着剤と考えてしまいましょう)、5%のその他の素材になっています。この5%の中に可塑剤が入っています。プラスチックを形成する素材です。
 

ワックスを塗布すると最初の図の様にポリマーは下に並びます。水分が蒸発する事で、中の可塑剤の濃度が濃くなります。ある一定点を超えると可塑剤がポリマーに働きかけ、柔らかくなり、フィルム形成が始まります(真ん中の図)。更に時間が形成が進み、一枚のフィルムになります(右端の図)。ここでワックスが塗り上がったのですが、実際には可塑剤が残っており、可塑剤が完全に抜け切るには1月掛ります。
 以上がフィルム形成の概略になります。そこで、最初のフィルム形成の際に、扇風機で空気をワックスに直接当ててしまうと、可塑剤の濃度を急激に上げてしまうために、しっかりとしたフィルム形成が出来ません。お芋を煮るのに温度を急激に上げてしまうと中が生で外側が柔らかくなってしまいますが、同じような事がフィルム形成でも起きてしまう可能性があるのです。扇風機を使う際には、ワックスに直接当てずに、床と平行に向け空気の移動を促す様にすべきなのです。こうして、完全なフィルムを作る事で、フィルムメンテナンスが可能になります。
 我が日本ではビルクリーニング技能士の試験で、ワックス再塗布の際に扇風機を直接ワックスに当てます。仮に世界のメンテナンスパーソンがそれを見たら、大いに首を傾げるでしょう。フィルム形成が不完全になる可能性が大きいからです。しかし、我が日本では殆どの現場が毎月定期清掃(予算によっては隔月)、毎年剥離清掃と言う習慣が定着しているので、これでも充分なのです。
 しかし、この方法ではある一定のところからの作業効率化は不可能です。定期清掃の予算を削れば、洗浄後の水拭きが甘くなるのは前回述べた通りです。剥離の時期が早まるでしょう。
 しかし、論理的・合理的な「フィルムメンテナンス」をすれば、剥離は5年以上する必要はないでしょうし、毎回の定期清掃ではなく、補修清掃を活用する事(前回述べました)で毎回の洗浄も楽に、短時間で行えるでしょう。剥離清掃が激減する事から、剥離剤の処理回数も減り環境にも予算にも優しくなります。
 もう一つ、述べておく必要があるのは、上記の様にフィルムの完全硬化にはひと月掛ります。毎月の定期清掃という事は、やっとワックスが固まったと思ったら、直ぐに洗浄・ワックス再塗布になってしまうという事で、ワックスの成分であるアクリル樹脂(アクリル樹脂は硬く、透明なのが特徴)の硬さを生かし切れていない事になるのです。
 フィルムメンテナンスに移行しましょう。フィルム形成を完璧にし、ダスト管理を徹底し、その場所に対する最適な洗剤を選び、補修清掃を取り入れます。定期清掃も目的をハッキリと決め、アルカリ残留を防ぐ方法を取り入れます。
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