さて、「図書館の見習い司書」(以下、「見習い司書」)
のレビューを2回続けてきました。
前々回の投稿では「図書館の大魔術師」(以下、「大魔術師」)との違いを確認しました。
前回の投稿では「見習い司書」の主人公シオの性格や登場人物について簡単に確認しました。
今回はいよいよ、物語本編の話を確認します。

この物語のハイライトは、カフナになるための定期試験の一つである「季公課題」をクリアすること。
季公課題は抜き打ちテストです。
班の3人が一組となって協力して課題をこなさないといけないのです。

課題準備のため、シオは「印刷革命論」というテーマの資料作りを任されます。
資料作りに夢中になったシオは、調べものでつい徹夜をしてしまいます。
当然、翌日の仕事は眠気でグダグダ。

(職場でこれはないでしょ。。。)
ついにシオは、大変な失敗をやらかしてしまうのです!
どんな失敗かというと、貴重な装飾写本の破損。

写本とは先人が残した手書きの書物で、もちろん世界に一つだけしかありません。
そして、その中でも装飾写本は芸術性の高い、いわば世界遺産ともいえる写本です。
修復できたとしても、それはもはや修復者の手が入ったものであって、もとの写本と同じではありません。
大失態をやらかしたシオに対し、ついに上層部はおかんむり。
シオは、クビか左遷か、どっちかになりそうです。
シオ、大ピーンチ!!
しかし!実は大失態をやったのはシオ本人ではなく班の別のメンバーであったことが発覚します。
シオは、お人好しなので、失態を犯した人をかばって自分のせいにするということをやっていたのです!
(・・・私個人としては、それは本当の意味で誰のためになることなのだろうと疑問は持ちますが、まぁそれはさておいて。。。)
でも、他人をかばったとしても、自ら失態を犯したといったシオが、無罪放免になるわけはありません。
このタイミングで、例の抜き打ちテスト、「季公課題」が班に与えられるのです。
これは、失敗を犯した班に対し、真のカフナを目指すものとして、なにが重要なのか頭を冷やしてよく考えろ、という上層部から課された命題なのです。
与えられた課題は、まったく知らない言語を話す老婦人の調べものを探し出す、というもの。
唯一の手掛かりは、老婦人が持つ、未知の言語で書かれた巻物の一部。
老婦人は、その巻物の全文を見たいようなのです。
コミュニケーションが取れず困り果てるシオ達。
そんな中、シオが重要なヒントに気が付きます。
そのヒントは、実はシオが徹夜で印刷革命論の資料をまとめたときに知ったものでした。
これにより班は無事季公課題を乗り越えることができたのです。
難題にぶつかったときに解決策を思いつくかどうかは、その人のそれまでの見聞き経験の量に依存するものです。
シオのように、いろんな本を読み、ヒトにかかわる人は、問題解決の引き出しを多く持ち、普段は役立たずでも緊急時に重要なヒントをもたらすのでしょう。
物語は最期を迎えます。最後は、シオをカフナの世界にいざなったメンターのモノローグです。
「本は世界也 本を護ること それ即ち 世界を護ること也」
カフナの世界の格言を持ち出して、カフナの役割を総括します。

でも、そんな重要な役割を認識しながらも、最後に一番大事なのは、
「本が大好き」
その気持ちなのです。

さて、3回に渡って投稿してきた「図書館の見習い司書」のレビュー、いかがだったでしょうか。
総括すれば、物語としてはやや平凡な盛り上がりでした。
問題解決も、すこし安直だったかなぁという印象です。
でも、やはり「図書館の大魔術師」で見られるような、作者の本への愛情や、心に残る本を読んだ時の私たちのすがすがしさを感じることができる、佳作だったとおもいます。
なにより、図書館を護る司書という一見ニッチなジャンルも、設定次第ではとても魅力的に描けるんだということがはっきりした作品だったと思います。
林先生には、ぜひ「図書館の見習い司書」を圧倒的に超える、壮大で美しいビブリオ・ファンタジーを描き続けていただければ嬉しいです!
(ところで「季公」って調べてもよくわかりませんでした。もしご存知の方がいたら教えてください~)