絵本というには余りにも凄惨な描写の
オンパレードです。
これはある人間の目を通して描かれる『地獄』
というのは一体どういう所かを描いたものです。
子供に読み聞かせをすると確実にトラウマに
なってしまいそうです。
僕が地獄絵図に興味を持ったのは確か中学時代の
ことで、ここでは千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵の
地獄絵図が採用されているのですが、僕が初めて
みたのは太宰治の文学アルバムの中に収録されて
いる地獄絵図で、彼もまた、幼少の折に見ているの
だそうです。
それはさておき、与太話をしてもしょうがないので
紹介に戻りますけれど、本書は延命寺所蔵の
地獄絵図十六幅をもとに構成し、文中のストーリーは
室町時代に作られた『平野よみがえり草紙』などに
より、構想され、文章を起こしたものなのだそうです。
死を迎えた一人の人間が牛頭、馬頭の二匹の鬼に
引っ立てられ、地獄へと連れて行かれます。
死出の山を登り、三途の川を渡り、閻魔大王の
前に引っ立てられ、さぁこの世の悪事を暴き立て
られるところでおじぞう様がやってきて、すんでの
ところで彼は現世によみがえることができました。
しかし、
『地獄がどんなところか、とっくりとみせてやろう』
という閻魔大王の言葉によって、地獄が開けて
きます。
そこで彼が見たものは「針地獄」 「火あぶり地獄」
「かまゆで地獄」 「なます地獄」…。
多種多様な地獄の中で日々鬼たちによって
なますに切り刻まれ、蚊まで繰り返しゆでられ、
火あぶりになっていく罪びとたちの姿でございました。
彼ら彼女らはすでに死んでいるので、何度でも
元通りになり、そのたびに責め苦を負わされる
というものでございました。
この絵を小学校二年生の男女三十四名に見せたところ、
本当にさまざまな反応が返ってきて、
『死を恐れる気持ち』
というのは本能的なものなんだな、ということが
本当によく分かりました。
これは初めて知ったことですが、漫画家の東村アキコ
さんが自身の描く子育てマンガ『ママはテンパリスト』
(集英社)の中に本書を登場させるなどの積極的な
推奨があり、それがきっかけでこの本が売れたの
だそうです。
仮に、地獄というものが存在して、自分がこういう
ところに行かなければならないとすれば、なんとも
過酷なものでございまして、も少し自分でも現世で
『徳』を積む機会があれば、少しずつでもいいので、
実践していければなと。そういったことを願いつつ、
ここで筆を擱きます。
絵本地獄―千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵
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