競輪にハマって転落していく坊主の記録。
偶然見かけた【今村昌平生誕100年】で観た。
他にもいいのがあったのに気づくのが遅かった、残念。
タイトルの『競輪上人行状記』の「上人」とは、仏教において知恵と徳がすぐれ、人々の模範となる高僧への敬称・称号で、「行状記」は実際の行いや行動を記した記録・伝記という意味になる。
だから文字どおりなら「競輪の知恵と徳にすぐれた人の記録」となるが、実際にはそれを逆に皮肉って、ギャンブル(競輪)にとち狂ってしまった僧侶の一部始終を記録した話になる。
僧侶になるのが嫌で高校教師になり、寺を出ていた伴春道(小沢昭一)は、兄・伴玄道(河合健二)の訃報を受けて寺に帰る。
父親の伴玄海(加藤嘉)は、檀家も減り、葬式の需要も少なくなっていることから、ここはひとつ、葬儀の威厳を高めようと派手な葬儀を考えていた。
玄海はこれをきっかけに、春道に寺に戻り、兄嫁の伴みの子(南田洋子)と結婚し、寺を継げと言う。
しかし春道は、今の寺は金をもらって葬儀をするだけで、宗教じゃない。
ただの営業、葬儀屋だと拒否する。
ところがある日、春道は競輪でたまたま勝ってしまい、ここから競輪にのめり込んでいく。
始まって早々、夫の祭壇に手を合わせるみの子の前に、夫の玄道が化けて出てきて、彼女にムチを振るい、悶えるみの子の姿はSMそのもの。
ここに春道が入ってくるが、彼が兄嫁に恋心を抱いているのはすぐにわかる。
玄海は本堂の再建を春道に託したいが、寺は檀家の間でも犬を売って食べてる「犬寺」と言われている。
春道は妊娠した教え子・小酒井サチ子(伊藤アイコ)の事を気にかけ、行方不明になったサチ子を探し出し、働き口として檀家の銭湯に紹介する。
しかしサチ子は、紹介された銭湯の売上金を盗んで男と逃げる。
ところがサチ子が逃げた男は父・源二(土方弘)で、サチ子は源二と飯場で暮らしていた。
春道はサチ子を寺に招き、一緒に暮らしはじめる。
ここから、みの子の子どもの父親が誰なのか、サチ子がはらんだ子の父親が誰なのか。
そして春道はみの子に言い寄るが断られ、サチ子と暮らすという、ほぼ近親相姦の淫乱関係になっていく。
この関係を見てると、当初、サチ子のお腹の子が父親との間にできた子だと見抜き、「貧乏の肌に突き刺さる痛み」と言っていた春道の同僚教師の言葉が頭をよぎる。
初めは当たったものの、競輪の沼にハマっていく春道が哀れで、周りを不幸にしていくが、どこをどう突っついても自業自得で救いようがない。
しかし、最後は思いとどまりハッピーエンドなんだが、最初は寺を「ただの営業、葬儀屋」と批判していた男が、たまたま競輪で勝ったところから、金、欲、女と、どんどん俗物化していく。
最後には自分の競輪経験まで商売にしてしまう。
このふてぶてしさは笑える。
伴みの子を演じた南田洋子が色っぽく、小酒井サチ子を演じた伊藤アイコがとにかく一途で可愛い。
競輪の手ほどきをする色川を演じた加藤武はやっぱり味があり、渡辺美佐子も良かった。
