シー・シェパードのような反捕鯨団体が観たら発狂する、鯨に取り憑かれた男を描いた海洋アドベンチャー作品。
モビィ・ディックと名付けた白鯨に片足を食い千切られたエーハブ船長(グレゴリー・ペック)は、憎悪と復讐の狂気に取り憑かれていて、本来の捕鯨の意味すら忘れてる。
海に興味があるイシュメール(リチャード・ベースハート)は、捕鯨船ピークオッド号の乗組員を公募に応募し採用され、他にも一攫千金を狙う鯨捕りの猛者が集まる。
ピークオッド号が出航し鯨捕りに励む乗組員とは別に、エーハブ船長の様子がおかしい。
一等航海士のスターバック(リチャード・ベイスハート)は、エーハブの航海の目的が捕鯨ではなく個人的な復讐によるものだと知ることになる。
スターバックはエーハブの復讐劇が「ただの自殺行為」であることを見抜き、家族の元へ帰えろうと彼を説得するが聞き入れられず、乗組員に事情を説明し、クーデターを提案するが誰も聞き入れない。
その後もスターバックはエーハブと、鯨捕りとしてのプライドの狭間で激しく苦悩することになる。
モビィ・ディックの息づかいを察知したエーハブは、乗組員全員の命を道連れに破滅へと爆走していく。
エーハブ船長を演じるのがグレゴリー・ペックという、懐かしい名前が踊ってる。
ストーリーはシンプルで、エーハブという絶対権力の狂気にハメられ、乗組員全員が「死の片道切符」へと引きずり込まれていく様を描いてる。
スターバックがエーハブを説得する時に「我々の仕事は鯨を殺して世界に油を供給する事」。
これを実行するから人の役に立ち、結果的に神も喜ぶという。
しかしエーハブはこの尊い仕事の目的とは違い、神に挑戦することになる。
冒頭から教会で讃美歌を歌うシーンや、捕鯨が神に許された仕事だという雰囲気が漂ってる。
ここに個人の野心が入ってくることで「神を冒涜してる」という話が底辺にあり、死と隣り合わせの仕事って最期は神に行き着くんだと思う。
そしてエーハブは取り憑かれたようにモビィ・ディックが居る漁場に到着すると、見張りが落ちて海に飲み込まれる。
これは明らかに罰が当たったってシーンで、乗組員たちも息をのむ。
ここから風も吹かない、日差しもないので、船員の戦意も段々と落ちていく。
しかしモビィ・ディックが目の前に現れると雰囲気が一変する。
怯えて引き返そうという船員にスターバックが「怯えるな悪魔じゃない、目の前にいるのは鯨だ!追え!」「鯨鳥が鯨に背中を見せるのきゃ!」というセリフが印象的で、荒くれ者の船員たちも我に返り奮い立つ。
スターバックもモビィ・ディックを前にして、彼なりの鯨捕りとしてのプライドが勝ったんだが、ここから皆さん自滅にまっしぐらになる。
モビィ・ディックもそうだが、鯨を追う男たちは明らかに模型でコミカルにも見えるんだが、これが逆にエーハブがモビィ・ディックの胴体に絡んで泳ぎ回るシーンが生々しい。
やってることは市中引き回し。
あれってエーハブは既に死んでいて、これを明らかな人形によって描いてて、この人形が無表情で観ていて可哀想になる。
本作は、実際に捕鯨船に乗船して捕鯨に従事した経験を持つ、ハーマン・メルヴィルが1851年に発表した小説が原作らしいが、今のような設備もないなか、槍一本で巨大鯨に挑むって私には想像できん。
しかしあの時代の漁師にはロマンに似た何かがあったんやろうな。
作り物感が半端ないけど、迫力十分なラストは良かった。
そしてコーヒーチェーン店「スターバックス」の名前の由来が、本作の一等航海士スターバックというのには驚いた。
あのロゴはそういう意味やったんや。
